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日外会誌. 85(10): 1308-1316, 1984


原著

肝再生と免疫応答
II. 肝再生の過程で活性化する抑制性細胞の性状とその遺伝支配

日本医科大学 第1外科学教室(主任:代田明郎教授)

宮原 成子

(昭和58年11月5日受付)

I.内容要旨
肝の部分切除とそれに続く肝再生の過程でマウスの生体内においてリンパ球が活性化する (pLNC : primed lymphnode cells) こと,さらにこのpLNCを再度,再生肝細胞で刺激すると典型的な二次免疫応答が認められることを第I報で報告した.本論文では, これら活性化したリンパ球の機能を解析し, pLNCが,再生肝細胞による同系マウスリンパ球の活性化反応(sMLHLR)を抑制すること, この抑制活性が肝切除後4日目のマウスのリンパ球ですでに認められ,少なくとも16日目までその活性が減弱しないことを示した.さらにこれらpLNCは, sMLHLRのみならず,同系リンパ球混合反応(sMLR) 及び同種リンパ球混合反応 (MLR)をも抑制するが,その際,抑制活性が得られるのは, pLNCとsMLR及びMLRにおける応答リンパ球がMajor Histocompatibility Complex (MHC)のI-A (I-B) subregionsで一致する場合のみであった.
また, pLNCを再生肝細胞で再刺激して得られるリンパ球 (ppLNC : pLNC which were stimulated again in vitro with 6-day hepatectomized liver cells) は,同様にsMLRを抑制するが,この際には,ppLNCとsMLRのIg領域が一致する必要があった.すなわち,pLNCの抑制活性が,MHCのI-A (I-B) subregionsにより調節されているのに対し,ppLNCのそれは,Ig領域の遺伝子によつて調節されており,肝の部分切除と再生の過程で,抑制性細胞のサーキットが活性化することが示唆された.

キーワード
肝部分切除, 肝再生, リンパ球, 抑制性細胞のサーキット, リンパ球混合反応

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