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日外会誌. 85(8): 791-798, 1984


原著

肝再生と免疫応答 I. 肝再生の過程で活性化する免疫系の解析

日本医科大学 第1外科学教室(主任:代田明郎教授)

宮原 成子

(昭和58年11月5日受付)

I.内容要旨
始めて肝の再生現象が報告されて以来,85年以上を経過したにもかかわらず,肝に加えられた傷害が,どのようにして正常な肝細胞の増殖をひき起こし,その増殖がどのようにして一定時期に停止するかという再生現象の根本問題は未解決のままである.
今回著者は,肝の再生に免疫系が果たす役割を明らかにする目的で,マウスの肝の部分切除を行ない,その再生過程でおこる免疫系の変化を観察した.
肝切除後6日目のマウスの再生肝細胞をMitomycin-C (MMC) 処理後正常な同系のリンパ球と培養すると,このリソパ球は活性化する (sMLHLR : syngeneic mixed hepatectomized liver cell-lymphocyte reaction).このリンパ球の活性化反応は,再生肝細胞からクッパー細胞を除去するか或いは再生肝細胞を抗Iaモノクロナール抗体で処理すると減弱する.従つて,リンパ球の活性化にはIa+のクッパー細胞が重要な役割りを演じているものと思われる.さらに,肝の部分切除を受けたマウスのリンパ球を再度,再生肝細胞で刺激すると,正常リンパ球を用いたsMLHLRに比し,活性化が促進され,典型的な二次応答のパターンを示した.すなわち,肝の部分切除と再生の過程で,生体内において免疫応答が惹起される可能性が示唆された. この反応で活性化する主たるリンパ球は,一次sMLHLRでは,Lyt-1+のT 細胞であり,二次sMLHLRでは, Lyt-2+のT 細胞であった.

キーワード
肝部分切除, 再生肝細胞, リンパ球, クッパー細胞, モノクロナール抗体

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