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日外会誌. 85(8): 763-772, 1984
原著
乳癌におけるホルモンレセプター
-レセプターと病理形態学的関連性を中心に-
I.内容要旨対象乳癌症例217例の ERC,ERN,PRCをDCC法によつて測定し,ERC : 48.8%,ERN : 37.8%,PRC : 32.7% の陽性率を得た.
レセプターの陽性率と組織学的悪性度との関係をみると,ERC,ERN,PRCとも悪性度が高くなれば陽性率は低下する傾向がみられた.さらに悪性度を構成する三因子,tubule formation, nuclear pleomorphism,mitotic activityとの関係より,分化度とレセプターの陽性率には正の相関が認められた.これらの関係を,レセプターの陽陰性の組合せからみると,ERCの有無(ERC (+), ERN (-), PRC (-)とERC (-), ERN (-), PRC (-) の違い)では,分化度に違いはみられなかったが,ERNの有無(ERC, (+), ERN (+), PRC (-) とERC (+), ERN (-), PRC (-) の違い)では分化度に差がみられ,さらにPRCの有無によっても, ERNの有無程ではないが,分化度に相違を認めた.
癌細胞の核の直径,mitotic index,
3H -thymidineによる labeling indexとホルモンレセプターの関係をみると,核の直径が大きい程 ERCの陽性率は低く,mitotic index,labeling indexが高い程レセプターの陽性率は低い傾向がみられた.
乳癌細胞の超微形態とレセプターの関係をみると,ERC (+), ERN (+)の癌細胞がレセプター陰性の細胞に比較して,より正常細胞に近似した細胞内小器官を所有することが示された.
再発および進行乳癌で行われた内分泌療法の効果と,レセプターの関係についての考察より,ホルモン依存性を予知するためのよい指標として,それぞれのレセプターの結合部位数の程度によるよりも,ERC,ERN,PRCの陽陰性の組合せの方が優れていることが確かめられた.
ホルモンレセプターは,乳癌の臨床的な因子(腫瘤径,リンパ節転移の程度,臨床病期,組織型)とは独立して,乳癌の増殖,転移,予後などを予測できる因子として活用できる可能性について考察した.
キーワード
乳癌, エストロゲンレセプター, プロゲステロンレセプター, 乳癌の病理形態, 内分泌療法
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