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日外会誌. 85(8): 749-757, 1984
原著
腫瘍浸潤リンパ球のTCGF培養による特異的抗腫瘍能の誘導に関する基礎的研究
I.内容要旨ヒト乳癌におけるリンパ球浸潤をともなう髄様癌をはじめとして,一般にリンパ球浸澗をともなう癌の予後は良好であることが知られている.このように,腫瘍浸潤リンパ球 (TIL)は宿主の免疫学的腫瘍抵抗性の一つの表現とみなされているが,TILそのものについて抗腫瘍活性を検索した報告はいまだ少ない.
今回我々はDSマウスと同系の自然発生乳癌SC 42,SC 115を用いてTILの抗腫瘍活性について検討した.SC 42,SC 115をトリプシン処理にて細胞浮遊液としたのち,Percoll不連続密度勾配遠心法にてリンパ球を多く含む分画を分離し,T cell growth factor(TCGF)存在下に培養すると培養10日目には腫瘍細胞は消失し, thy-1, 2抗原陽性のT細胞が増殖した.この培養TILについて,
51Cr release assayによりその細胞障害活性を検索した.その結果,
(1) SC 42, SC 115それぞれの培養TILはそれぞれの腫瘍を特異的に強く溶解し,非特異的な溶解およびYAC-1に対する溶解は脾細胞と同等あるいは低かった.
(2) 脾細胞と腫瘍細胞とのMLTCにても特異的抗腫瘍能は誘導され得なかったことから,培養TILの特異的抗腫瘍能がTILの培養期間中に混入する腫瘍細胞の抗原感作によるものでないことが示唆された.
(3) 培養TILのanti thy-1, 2およびanti asialo GM1処理にて特異的抗腫瘍能はおもにthy-1, 2抗原陽性細胞に,YAC-1に対するNK活性はおもにasialo GM1抗原陽性細胞に担われていることが示された.
以上のことから,TILのなかに,それぞれの腫瘍によつて特異的に感作をうけた,潜在的腫瘍能を有するT細胞の存在することが示された.
キーワード
腫瘍浸濶リンパ球, 腫瘍特異的抗腫瘍能, T細胞増殖因子, Interleukin-2, マウス乳癌
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