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日外会誌. 85(7): 705-718, 1984
原著
胃酸分泌動態からみた胆道再建術式の実験的研究
-特にRoux-en Y型と空腸間置型について-
I.内容要旨胆汁の流れからみると比較的生理的な胆嚢十二指腸間有茎空腸間置術と非生理的なRoux-en Y型胆嚢空腸吻合術は共に空腸を用いての胆道再建術式である.Heidenhain pouchおよび十二指腸瘻を作成したイヌを用いて,両胆道再建術が胃酸分泌およびその抑制機構におよぼす影響を実験的に検討した.
胃酸分泌機構への影響は,両胆道再建術前後の牛肉エキス3g/kg経口投与後にHeidenhain pouchから分泌される酸排出量と血清ガストリン値を測定し,両胆道再建術による変動を検索した.
胃酸分泌抑制機構への影響はtetragastrin 4μg/kg.hrの静脈内持続注入刺激下に糖あるいは脂肪を十二指腸内に投与し,Heidenhain pouchから流出する胃酸分泌量の変動を検索した.
牛肉エキス負荷後のHeidenhain pouchからの胃酸分泌はRoux-en Y型胆嚢空腸吻合術後に有意の上昇を示したが,胆嚢十二指腸間有茎空腸間置術後では増加する傾向を示すにすぎなかった.血清ガストリン値は両胆道再建術で有意の変動を示さなかった.
十二指腸内に投与した糖による胃酸分泌の抑制効果は両胆道再建術前後でほぼ同程度に認めた.十二指腸内に投与した脂肪による胃酸分泌の抑制効果は,Roux-en Y型胆嚢空腸吻合術後では全くみられなかったが,胆嚢十二指腸間有茎空腸間置術後では有意に認めた.しかし,術前に比べてその抑制効果は減少していた.
以上の成績から,胆汁を十二指腸に流す胆嚢十二指腸間有茎空腸間置術はRoux-en Y型胆嚢空腸吻合術より胃酸分泌およびその抑制機構の面からすぐれた術式である.Roux-en Y型胆嚢空腸吻合術後にみる胃酸分泌亢進機序の一因に,胆汁の十二指腸への流出欠如による胃酸分泌抑制効果の減少が関与していると考えられた.
キーワード
胆道再建術, Roux-en Y型胆嚢空腸吻合術, 空腸間置型胆嚢空腸吻合術, 胃酸分泌
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