[書誌情報] [全文PDF] (1112KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 85(4): 378-391, 1984


原著

慢性閉塞性動脈疾患の赤血球変形能と膜脂質に関する研究

岐阜大学 第1外科(指導:稲田潔教授)

澤村 俊比古

(昭和58年5月24日受付)

I.内容要旨
慢性閉塞性動脈疾患の赤血球変形能をマイクロフィルター法により測定し,あわせて変形能に影響をおよぼす種々の因子について検討した.
閉塞性動脈硬化症(以下ASO), Buerger病(以下TAO)の両疾患ともに赤血球変形能(全血)の低下を認めた.しかもASOでは変形能不良群は良好群に比し,指趾の潰瘍形成,他臓器合併症および再発の頻度が高く,変形能と微小循環障害(臓器障害)との深い関係が示唆された.
また全血による変形能とアルブミン希釈による変形能との比較検討から,ASOでの変形能低下には血漿成分よりも血球自体の影響が大きいと考えられた.
ASOで変形能と血清HDL-コレステロールとの間に正の相関,血清過酸化脂質との間に負の相関を認めた.
赤血球膜脂質の分析からASOではリン脂質には著明な変動はみられず,コレステロールの増加および,コレステロール/リン脂質比の増大がみられ,しかもその変動は不良群でより顕著であった.ASOでは赤血球変形能の低下に膜コレステロールの関与が推察された.
TAOでは,ASOと比較的類似した脂質変動を示し,変形能低下に膜脂質の関与が示唆された.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, Buerger病, 赤血球変形能, 赤血球膜脂質, HDL-コレステロール

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。