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日外会誌. 85(3): 231-237, 1984
原著
下部食道括約機構に及ぼすpitressin(8-arginine vasopressin)の影響について
I.内容要旨脳下垂体後葉ホルモン剤の1つであるpitressinは食道静脈瘤破裂時の止血に多用されているが,LES (lower esophageal sphincter) に対する作用については不明な点が多い.そこで,イヌを用いて,pitressinの注入経路とその速度によつて,上腸間膜動脈と末梢静脈からの2.75mU/kg/min注入群,末梢静脈からの14mU/kg/minと28mU/kg/min注入群の4つに分け,20分間のpitressin注入時とその前後にわたりLES圧の他,胃・十二指腸内圧の変動を検討した.
上腸間膜動脈と末梢静脈からの2.75mU/kg/min注入の2群においては,LES圧を初め,前庭部内圧,十二指腸内圧に著変はみられなかつた.これに反して,末梢静脈からの14と28mU/kg/minの両群ではpitressin注入終了直後のLES圧に有意の低下がみられた (p<0.001).また,その低下および注入終了後の回復遷延の程度は28mU/kg/minで大であった.
以上より,pitressinの大量投与はLESに対して抑制的に慟くことが考えられた.また,食道静脈瘤出血に対する使用方法としては,2.75mU/kg/minの少ない量がその効果と副作用の点からみて望ましいと思われた.
キーワード
下部食道括約機構, pitressin, vasopressin, gastroesophageal reflux
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