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日外会誌. 85(1): 77-81, 1984


原著

特異な肉眼的形態を呈したα-Fetoprotein産生胃癌の1例

東京大学 第2外科
*) 東京大学 病理
#) 現在 東京女子医科大学 内分泌外科

児玉 孝也#) , 柴山 和夫 , 金井 福栄 , 飯塚 一郎 , 平石 守 , 田中 洋一 , 高浜 龍彦 , 片山 憲恃 , 丸山 雄二 , 和田 達雄 , 高橋 周二*) , 長嶋 和郎*)

(昭和58年年3月16日受付)

I.内容要旨
63歳男性の胃前庭部に生じたBorrmann II型の癌が切除されたが,癌は軟らかい分葉状の隆起を呈し,その一部が他の部位の癌組織の中にもぐり込むという特異な形態を示した.血清中α-fetoprotein (AFP) は最高19,000ng/mlときわめて高値であった.患者は術後40日目に肝転移等のため死亡した.切除胃癌組織は明るい空虚な胞体を有する細胞よりなり,高分化腺癌の様態を示したが,肝細胞癌あるいは一部の胎生期癌に似ているとも言える所見であった.peroxidase antiperoxidase (PAP) 法で胃癌原発巣中にAFPの存在が確認され,また電顕的には明るく空虚に見えた胞体内には非晶性の物質が多量に存在するのが認められた.文献的にはAFP産生自体は胃癌にかなり一般的に見られ,その多分化能の一端を示していると思われたが,発癌や分化という生物学的側面のみでなく,転移様式等診断治療上からも興味ある問題を提起している一例と思われた.

キーワード
α-fetoprotein, 胃癌, 転移性肝癌

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