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日外会誌. 85(1): 17-28, 1984
原著
食道癌切除例の再発形式に関する検討
-剖検例を中心に-
I.内容要旨昭和34年より53年までの20年間に,慶応義塾大学医学部外科学教室で切除された食道癌症例は381例である.このうち113例が剖検され,その平均生存期間は203日であった.これら,切除剖検例の臨床病理学的検討を行い,次のような結果を得た.
1) 再発が認められたのは68例60%で,残りの45例40%には再発がなかった.
2) 食道癌切除後の再発形式とその頻度は,リンパ節転移56例82%,遠隔臓器転移39例57%,播種性転移15例22%,周囲臓器よりの再発31例46%,断端再発11例16%,壁内転移9例13%であった.
3) 術後早期死亡剖検例51例のうち,リンパ節転移遺残は16例31%にみられ,その部位は上縦隔リンパ節群18%,腹部リンパ節群12%,頚部リンパ節群10%,後縦隔リンパ節群8%と,頚部上縦隔リンパ節転移の遺残例が術後早期死亡剖検例の24%に達していた.
4) 遠隔臓器転移は血行性臓器転移35例,臓器の癌性リンパ管症5例,腫揚血栓3例で,転移臓器は肺,肝,骨,副腎が多かった.
5) 播種性転移は胸膜播種が13例,腹膜播種が3例で,腹膜播種は下部食道癌にのみみられた.
6) 周囲臓器よりの再発は気管・気管支ついで胸部大動脈に多かった.このような再発は切除標本の外膜切離面に癌が露出している症例で高頻度にみられた.
7) 術前照射は周囲臓器よりの再発を遅らせる効果が認められた.しかも,術前照射中にリンパ節転移率は増加しなかった.
8) 術後3ヶ月以内の早期死亡剖検例の癌遺残状況から試算すると,局所の合併切除は4%,拡大リンパ節廓清は10%,両者が完全に行われた場合は現状より19%の生存率向上が予想された.
キーワード
食道癌剖検所見, 食道癌再発形式
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