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日外会誌. 84(12): 1286-1290, 1983
原著
Revascularization syndromeの病態とその対策
I.内容要旨名大医学部分院外科では過去3年間に, 13例の急性四肢動脈閉塞症に対して16回の血栓・塞栓摘除術を施行したが,術後, revascularization syndrome
1)による死亡1例と,大腿切断・腎不全1例を経験した.即ち,症例1は62歳男性.腹部大動脈及び両側腸骨動脈血栓症で,発症3日後に血栓摘除術を施行したが,血流再開後1時間40分で,高K血症による心停止で死亡した.症例2は,29歳のネフローゼ患者で,腹部大動脈と両側腸骨動脈血栓症のため,発症1日後に血栓摘除術施行.術前から既にショック状態で無尿であつた.術後,末梢動脈拍動を良く触知するのに右下肢の虚血は改善せず,大腿切断した.腎不全のために人工透析も施行. 1年後に再び同じ部位の血栓症を起こし,発症5時間後に血行再建を行つた.此の症例は2度ともに閉塞発症時,ネフローゼのコントロールが悪く,又,血液は濃縮していた.
Revascularization syndromeの病因は,大量の筋肉が急性に虚血に陥ると,壊死筋細胞よりミオグロビン,CPK,Kなどが大量に流出し,血流再開によって,ミオグロビン-ネフローゼによる腎不全と,高K血症による心停止が起こるのである.本症が発症するか否かの診断は困難な場合が多いが,急性閉塞発症後の経過時間と,虚血筋の量が指標となる.即ち,閉塞発症後12時間以内で,筋虚血範囲の小さい症例では心配ない.しかし,両側殿筋と下肢を含む広範囲の筋肉が虚血に陥り,発症後24時間以上経過している場合には,治療は血行再建術ではなく患肢切断の可能性が極めて大きい.広範囲筋虚血でも12時間以内の場合には,体液補正に重点をおいて血行再建を行う.さらに,手術直前の血清CrとBUNが正常範囲にあれば,術後の腎不全や死亡は避けられる.
キーワード
急性四肢動脈閉塞症, 血栓・塞栓摘除術, revascularization syndrome, ミオグロビン-ネフローゼ, 高K血症
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