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日外会誌. 84(12): 1243-1250, 1983
原著
開腹手術後の腎機能ハロセン麻酔と硬膜外麻酔の比較検討;β2-ミクログロブリン浸透圧,クレアチニンクリアランス,自由水クリアランスを指標として
I.内容要旨開腹手術後における腎機能の変化を,ハロセン麻酔 (I群,n=14),硬膜外麻酔 (II群,n=9) について比較検討した.指標としてクレアチニンクリアランス (Ccr),血清及び尿BMG濃度 (P-BMG,UBMG),血清及び尿浸透圧 (P-OSM,U-OSM),自由水クリアランス(C-H
2O)を用いた.術前値をコントロールとして,手術当日及び術後7日までの各日の値を比較し,以下の結論を得た.
1. Ccrは,両群とも手術当日及び術後1日に増加あるいは増加煩向を示した.これは,術後の代謝,循環面での負荷の増大に対する生理的代償反応であると考えられた.
2. P-BMGとCcrの相関は,次式を得た.
log (Ccr)=-0.234log (P-BMG)+1.918
n=123, R=-0.332, p<0.001
3. U-BMGは,両群とも手術後一過性に急激に上昇し,I群では術後4日,II群では術後2日に,術前値に回復した.このU-BMGの上昇は,開腹手術後の尿細管障害を示すが,術前値への回復が,I群よりII群でより早くおこることから,尿細管障害の程度が硬膜外麻酔で軽度であつたと類推し得る.
4. P-OSM は,I群で術後1日, 2日,II群で術後1日に低下した.これは,糖質液又は電解質維持液を主体とした輸液による低浸透圧血症と考えられた.
5. C-H
2Oは,両群で手術当日に一旦低下したが,これは,尿細管障害が手術直後よりも術後1日以降に強くあらわれるためと考えられた.両群で術後1日にC-H
2Oは上昇したが,これは,U-BMGの上昇,U-OSMの低下と同様に,尿細管障害によるものと思われた.
6. 開腹手術後の腎機能の追跡には,従来の糸球体機能の指標のみでなく,尿細管機能の指標を同時に測定することが望ましい.また術後尿細管障害は, U-BMG,U-OSM,C-H
2Oによつて示されるが,なかでもU-BMGは,極めて感受性の高い検査項目であると考えられた.
キーワード
ハロセン麻酔, 硬膜外麻酔, 開腹手術, β2-ミクログロブリン, 尿細管障害
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