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日外会誌. 84(12): 1229-1236, 1983
原著
消化器癌患者腹水の免疫抑制能に関する検討
I.内容要旨消化器癌における腹膜播種は臨床上重要視されるべき問題であるが,腹膜播種に由来する癌性腹水の宿主に対する影響についての検索とくに免疫学的検索は全くなされていないので,胃癌, 大腸癌腹水についての免疫学的検討を行なつた.
進行胃癌36名,大腸癌13名,対照としての肝硬変13名,うつ血性心不全3名より腹水を採取,7,000Xg 30分間遠沈し,0.22μmの膜濾過後,蛋白濃度を測定した.健康人の末梢血リンパ球を分離して,MLRおよびPHA,PPDによるリンパ球幼若化反応 (lymphoproliferation-LP-) を行い,これらに腹水を添加し
3H-TdRの取り込みによりLP反応に対する腹水の影響を検討するとともに,NK反応に対する腹水の影響を
51Cr-release法にて測定した. さらに腹水中のAFP,CEA,immunosuppressive acidic protein (IAP)を測定し,またSephadex G 200Gel fractionationにより免疫抑制作用を有する腹水中の因子を検索した.腹水のMLR,NK活性に対する抑制作用と癌患者予後との関係を検討した.なおリンパ球のviabilityはtrypan blue dye exclusion testによつた.
癌性腹水は肝硬変腹水,うつ血性心不全腹水に比べてMLR,NK活性及びLP反応を強く抑制し,抑制作用は腹水中の蛋白濃度に対してdose-dependencyを示した.MLR,NK反応の培養開始よりの腹水添加時間の経過に伴い腹水の抑制作用が低下し,とくにNK活性に対しては4時間後添加においては抑制作用を示さなかつた.これはSephadex G 200Gel fractionationの分子量約20万以上の分画に存在し,これらの抑制作用が強いものほど癌患者予後が短い傾向がみられた.またMLR,NK活性とCEA,IAPとは相関関係を認めなかつた.
キーワード
消化器癌, 癌性腹水, 免疫抑制因子
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