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日外会誌. 84(11): 1130-1137, 1983
原著
凍結手術後比較的早期の抗腫瘍免疫活性について
-ラット転移性乳癌を用いた実験的研究
I.内容要旨悪性腫瘍に対する凍結手術が宿主の抗腫瘍免疫能にいかなる影響をもたらすかについて,その増加を認めるものや,逆に低下を認めるものがあつて,諸家の間でかなりの懸隔がある.凍結手術後,比較的早期の抗腫瘍免疫活性について,ラット転移性乳癌を用いて実験的研究を行つた. 6週令SD系同系雌ラットを用い,担癌期間は2週間とし,外科的切除単独,凍結手術,外科的切除後凍結融解腫瘍片(FTV)再移植,外科的切除後72時間絶食負荷の4群につき,転移発生頻度,転移死亡率などを,又外科的切除単独,凍結手術群につき特異的免疫能を検討した. FTV再移植群では切除単独群よりも転移死亡率増加傾向と生存日数の短縮を認め,絶食群では切除単独群よりも転移死亡率の増加を示したのに対し,凍結手術群は切除単独群と比べ,転移死亡率,生存日数とも有意差を示さなかつた. FTV 再移植群では切除単独群よりも肺転移率が高く,絶食負荷群では切除単独群,凍結手術群に比してリンパ節転移率が高かつた.一方凍結手術群は切除単独群に比して肺転移率もリンパ節転移率も有意差を示さなかつた.特異的足蹠反応率は処置2, 3週後では,凍結手術群で切除単独群よりも低かつた.
Winn中和試験では腫瘍細胞対脾細胞比 1:100で処置 1,3週後,切除単独群,凍結手術群とも正常対照群に比し腫瘍発育抑制を示したが,その効果は後者が劣つた.不活化血清のin vivo実験による観察結果では,処置1週後,切除単独群は腫瘍発育促進を,凍結手術群は抑制傾向を示し,両者間に有意差を認めた.以上の結果より,凍結手術後比較的早期に観察された抗腫瘍免疫活性の軽度の低下は抗原過剰による阻止効果によると考えるよりも,手術侵襲の結果か或いは緩徐な抗原吸収の結果としての抑制性T細胞活性の賦活によるものでないかと考えられた.
キーワード
転移性ラット乳癌, 凍結手術, 特異的抗腫瘍免疫
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