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日外会誌. 84(10): 1072-1083, 1983
原著
ビリルビン系石に対する新しい直接溶解剤
I.内容要旨肝内結石症の治療は最近の手術手技や術後管理の進歩ならびに内視鏡を含めた種々の機械的截石術の発達により,著しい向上をみている.しかし肝内胆管の解剖学的複雑さから結石を遺残させることもまれではなく,胆石症再手術例の半数以上が肝内結石症である所以である.これまでビリルビン系石(ビ系石)に対する直接溶解剤として,ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液(HMP)が使用されていたが, HMPにはビリルビンを溶解させる力は無く,ビリルビン自体に対する直接溶解剤として,ジメチルスルフォキサイド(DMSO)に着目し,以下の基礎実験を行つた.
1. 発熱実験. 2. 毒性実験(LD
50,経口投与による血液生化学検査,胆道系注入,消化管内注入,経静脈投与による心電図変化および心筋に対する影響) 3. 溶解実験(ヒトビ系石に対する溶解,モデル溶解実験)
発熱実験,毒性実験ともに副作用や毒性を示唆する所見は全く認められず,安全に生体に応用できることがたしかめられた.また溶解実験ではビリルビンに対してすぐれた溶解力を示し, HMPとの併用で一層の効果を期待することができる.
以上の基礎実験により,その安全性と溶解効果をたしかめ,実際に臨床応用を試みた.肝内結石症2例,総胆管結石症3例,胆嚢結石症1例の計6例について使用したが,いずれも著明な副作用を認めることなく,満足すべき結果が得られた.
今後ビ系石を有した症例で,根治的な手術や機械的な截石が困難な症例,もしくは術前の補助的療法としてDMSOおよびDMSOとHMPとの併用溶解療法は有効な治療法になり得ると思われる.
キーワード
ビリルビン系石, 直接胆石溶解剤, ジメチルスルフォキサイド(DMSO), ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液(HMP)
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