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日外会誌. 84(10): 1042-1050, 1983
原著
肺巨細胞癌(巨細胞型大細胞癌)の臨床病理像
I.内容要旨肺の巨細胞癌は現在未分化大細胞癌の1亜型として分類されており,組織診断に際して規約上癌巣の30%以上が単核,多核の巨細胞で占められる必要があるとされている.今回非切除1例,切除5例の巨細胞癌について臨床病理学的な解析を加え,殊に定説が出されていない組織発生の問題について文献的考察を行なつた. 6例中1例は60歳代であるが残り5例は50歳代で肺癌発生年齢からすると比較的若年に偏している.全例男子であり肺野発生であつた.周囲臓器,他肺葉の合併切除を伴ったものが3例存在した.予後は1例の生存例(術後4カ月現在放射線治療後)を除いて全例1年以内に死亡しており,他研究者の報告と同様極めて不良である.従来最も予後不良とされてきたoat cell carcinoma を含む未分化小細胞癌より更に悪く, clinical entityとして別個の扱いが必要とされる疾患であろう.
巨細胞癌細胞が主体の部分は壊死傾向がきわめて強く,細胞間結合は極めて希薄であり早期に脈管侵襲を起こしやすいと考えられる.電顕的にはlight cellとdark cellよりなり,核内,胞体内のinclusion bodyが散見される.
組織発生については異論が多いが,おおむね, 1) 気管支上皮発生, 2)細気管支上皮,肺胞上皮発生, 3)気管支腺発生の3つの説がある.組織学的にadenocarcinomaに分化するcomponent(部分的にepidermoid patternもみられる事がある)を認めることが多く,気管支ないし細気管支上皮由来の腫瘍である可能性が大であるが, どのレベルの細胞を母体とするかについてはより詳しい検討が必要である.
キーワード
肺巨細胞癌(巨細胞型未分化大細胞癌), adenoid cystic carcinoma.
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