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日外会誌. 84(7): 602-611, 1983


原著

慢性肝障害に伴う内因性エンドトキシン血症の発来とその役割について
-特に無菌動物を用いた脂肪肝実験を中心として-

日本医科大学 第1外科学教室(主任:代田明郎教授)

田村 仁

(昭和57年11月1日受付)

I.内容要旨
慢性肝障害の病態におよぼす腸管内細菌由来の内因性endotoxinの影響を検討するために,無菌及び普通ラットに1% cholesterol-0.5% cholic acidを添加した実験食を投与し,慢性肝障害を伴つた脂肪肝を作製し,その際の肝機能値の推移を中心に検討して,大要次の如き結果を得た.
1)実験食投与により肝重量は無菌群,普通群共に経日的に増加すると共に,その色調も乳白色調に変化し,明らかな脂肪肝を呈したが,その度合いは無菌群でより強く認められた.
2)血中endotoxinの検索では,無菌群は当然のことながら全例陰性であつた.普通群は実験食投与前,門脈血で10例中2例の腸性例を認めたが,大動脈血ではその2例も含め全て陰性であつた.しかしながら投与後は門脈血,大動脈血共に腸性例が増加し,ほぼ半数を占めるに至つた.
3)肝組織形態学所見をみると,実験食投与12週後ではビマン性空胞変化が存在するものの,中心静脈周辺には正常細胞も残存していた. 24週目に至るとビマン性空胞変化は中心静脈周辺にまで拡大すると共に,その空胞も巨大化した.これに対し,無菌群12週後ではビマン性空胞変化は中心静脈周辺にまでおよび,一部には細胞の蛋白変性も認めた.
4)glucagon負荷試験による肝予備能の推移をみると,無菌群,普通群共実験食投与後は著しく低下した.さらに普通群における大動脈血endotoxin陽性例では陰性例に比し,より低値をとる傾向をみせた.
5)肝糖代謝能の検索では無菌群,普通群共に実験食投与により,F6P,G6P,glucoseおよびPEPの値は著しく低下し, FDPは逆に上昇した.さらにendotoxin陽性例では陰性例に比してF6P,G6P値で,より低値をとつたのが特微的であつた.

キーワード
無菌動物, 脂肪肝, cAMP, endotoxin, 肝糖代謝

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