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日外会誌. 84(6): 564-572, 1983


原著

犬における実験大腸癌の作成-各種発癌剤投与法の比較

順天堂大学 第一外科学教室

岸野 洋

(昭和57年10月16日受付)

I.内容要旨
イヌに大腸癌を作成することができれば,小動物と違つてその発生過程を経時的に観察することが可能となり,治療法などの追求にもよき実験モデルとなりうる. ヒトの実験大腸癌モデルをイヌに作成する目的で下記の4つの方法を試みた.
使用したイヌは,ビーグル犬,雑犬を含めて14頭である.
第1法: 1,2-Dimethylhydrazine (DMH) を皮下注法で3頭の雑種成犬に平均3.78g投与し, 2頭の大腸にタコイボ様隆起を認めた.組織学的には,粘膜下のリンパ沪胞の増生であった.
第2報: N-methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine (MNNG) を浸漬スポンジ投与法で2頭のビーグル成犬, 2頭の雑種成犬に平均3.47g投与した. ビーグル犬の1頭に平滑筋腫を認めた.
第3報: N-ethyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine (ENNG) を浸漬スボンジ投与法で4頭の雑種成犬に平均4.46g投与した. 1頭にタコイボ様隆起を認めた.組織学的には,第1法の場合と同様にリンパ沪胞の増生であつた.
第4法: ENNGを坐剤投与法で3頭の雑種成犬に平均14.3g投与した. 3頭全例に大腸癌の発生を認めた.そのうち2頭は進行大腸癌で, 1頭に肝,肺,腎への臓器転移およびリンパ節転移を認めた.のこりの1頭は早期大腸癌であつた.
以上のことから, ヒトの大腸癌のモデルとしてイヌの実験大腸癌作成にはENNG坐剤投与法が最も有用である.

キーワード
実験大腸癌, ENNG坐薬, DMH, MNNG

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