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日外会誌. 84(6): 556-563, 1983
原著
腸閉塞状態における閉塞上下腸管の運動能に関する生化学的研究
I.内容要旨腸管の運動能を支配する生化学的因子としての平滑筋myosin B Mg
2+-ATPase活性を測定し,腸閉塞状態におけるその動態について実験的,臨床的検討を行つた.
研究対象及び方法:①実験的対象:結腸狭窄作成犬の狭窄上下結腸壁筋層.②臨床的対象:先天性小腸閉塞新生児7例より手術時に得られた閉塞部上下小腸壁筋層, これらの検索材料から抽出されたmyosin BのMg
2+-ATPase活性を測定し比較検討した.
結果: 1. 結腸狭窄実験において,狭窄部口側腸管の運動能は閉塞発生後一時亢進した後に徐々に減退する. 2. 臨床例においては胎生の比較的早期に発生したと考えられる病型では,閉鎖部口側拡張腸管筋層のmyosin B Mg
2+-ATPase活性は劣性を示しており,運動能の低下が明らかであつた.しかし胎生の比較的末期に腸閉鎖が発生したと考えられる病型や狭窄病型では,閉鎖部口側拡張腸管のmyosin B Mg
2+-ATPase活性は高値を示し,同部の運動能亢進があることが示された.
結論: 1. 閉鎖部口側拡張腸管の運動能の差異は閉鎖の発生時期,すなわちその時間的経過に大きく関与していると考えられた. 2. したがつて先天性腸閉鎖により同様に口側腸管が拡張している場合でも,病型によつて手術々式を変更する必要があることが示されている. 3. さらに腸閉塞状態に陥つた場合は腸管運動能が低下する以前に手術を行う方が術後の良好な腸管運動のために得策であろうと考えられた.
キーワード
腸管壁平滑筋ミオシンB, 腸閉塞, 腸管運動能, Mg2+-ATPase
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