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日外会誌. 84(6): 529-544, 1983


原著

膵十二指腸切除後の膵機能
-特に残存膵の膵実質量比および膵ラ氏島数との関係について-

熊本大学 医学部第1外科学教室(指導:横山育三教授)

野浪 一道

(昭和57年9月28日受付)

I.内容要旨
ローラープラニメーターによる膵実質量比測定と膵組織中のhydroxyproline量との相関を9頭の犬を用いた膵管結紮実験で明らかにし,つぎに健常膵剖検例11例の膵実質量比と膵ラ氏島数を膵頭部,膵十二指腸切除予定線部(上腸間膜静脈1cm左側),膵体部,膵尾部に区分して測定した.膵ラ氏島数は100倍の倍率で10カ所無作為に鏡検し,その合計で表わした.つづいて37例の膵十二指腸切除術(Pancreatoduodenectomy,以下PDと略す)時の切除膵の膵実質量比および膵ラ氏島数とPD術後の残存膵の内外分泌機能との関係を検討し,以下の結果を得た.1)膵実質量比と膵組織中のhydroxyproline量とは相関係数γ=-0.94で逆相関を認め, ローラープラニメーターによる膵実質量比測定は膵線維化の度合を知る簡便な方法であつた. 2)健常膵の平均膵実質量比は膵頭部83.5±6.3%,PD切除予定線部87.6±5.1%,膵体部88.0±6.0%,膵尾部87.7±6.5%で,ほぼ全膵にわたり同一であつた.3)健常膵の平均膵ラ氏島数は膵頭部33.3±22.5個, PD切除予定線部28.0±14.1個,膵体部31.4±11.7個,膵尾部41.8±23.3個で,膵尾部はPD切除予定線部の約1.5倍であつた. 4)PD施行時の膵実質量比と膵ラ氏島数は健常膵の約半分であつた. 5)膵実質量比と膵液排出量とは相関係数γ=0.82と相関を認め,膵実質量比が80%以上の症例では膵液排出量が200ml/day以上みられ良好であつた.6)膵実質量比が70%以上の症例はPD後3~4年を経過してもなお残存膵外分泌機能は良好であつた.7)膵ラ氏島数とPD術後の耐糖能は相関係数γ=0.82で相関がみられ,また膵ラ氏島数が多い症例ほど残存膵のインスリン分泌能は良好であつた.

キーワード
膵十二指腸切除術, hydroxyproline, 膵実質量比, 膵ラ氏島数, 膵内外分泌機能

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