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日外会誌. 84(5): 418-423, 1983


原著

胃癌の増殖および胃癌細胞の蛋白代謝におよぼす消化管ホルモンの影響

秋田大学 医学部第一外科

山口 俊晴 , 坂東 一彦 , 田中 淳一 , 尾形 直人 , 高橋 俊雄

(昭和57年9月16日受付)

I.内容要旨
消化管ホルモンのtrophic actionに着目し,胃粘膜に対してtrophic actionを有するガストリンが,胃癌の代謝や増殖にどのような影響を与えるか検討した.はじめにin vitroのorgan cultureを用いて,胃癌組織の蛋白合成におよぼすガストリンの影響を検索した.14C-標識アミノ酸の細胞内への取り込みも,14C-標識蛋白の培地中への産生も,低分化型胃癌 (por) では促進されたが,分化型胃癌 (pap,tub1,tub2) では促進されなかつた.
次にヌードマウスに継代移植されているヒト胃癌の増殖におよぼすガストリン・セクレチンの影響について検討した.使用した胃癌は低分化型腺癌 (por) で,これはin vitroでガストリンによつて蛋白産生の促進されることがすでに確かめられていた. 2mm角の腫瘍片をヌードマウス背部皮下に移植した.(1) ガストリン250μg/kg, (2) ガストリン250μg/kg+セクレチン100U/kg, (3) セクチン100U/kg, (4) 生食水投与群の4群に分け,腫瘍移植後4日後より連日皮下注射した.
腫瘍の体積を(長径)×(短径)2 × 1/2として算出し体積倍化時間を求めると, (1) ガストリン群で4.5日, (2) ガストリン+セクレチン群で5.0日, (3) セクレチン群で5.0日, (4)生食群で6.7日であつた.つまり,腫瘍の増殖はガストリンの投与によつて促進された.またセクレチンの併用によつて,ガストリンの増殖促進効果は拮抗された. 3週間後に摘出した腫瘍重量はガストリン投与群で最も大であり,他の3群間に差は認められなかつた.
以上のことより,胃癌の中でも低分化型胃癌 (por) の中にはガストリン依存性のあるものが存在することが示された.このガストリンの作用はセクレチンによつてある程度拮抗された.消化管ホルモンによる治療を考える上で興味深い.

キーワード
消化管ホルモン, ガストリン, 胃癌, trophic action

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