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日外会誌. 84(5): 387-391, 1983
原著
心臓移植を目的とした摘出心の24時間保存法
I.内容要旨心臓移植を施行する際の技術的問題としてdonor心の保存は重要である.我々は長期保存を目的として新しい潅流装置を作製し,摘出心を拍動状態で24時間保存する方法について検討した.
成犬を開胸後大動脈と右房内に挿入した2本のカニューレを潅流装置に連結し,潅流を開始した後donor心を拍動状態で摘出して24時間の体外潅流を行つた.潅流液には血液を用いて潅流温度を30℃に維持し,持続的にグルコースの注入を行つた.潅流中Hb,pH,pO
2,pCO
2,電解質,グルコース濃度等の値を正常範囲内に維持した.平均潅流圧を一定に保ち,潅流中心電図を記録して心筋虚血変化及び不整脈の有無を観察した.
9例に本潅流法を用いて24時間の体外保存を行つた. 3例は保存直後に組織学的検索を行い,残り6例に保存後同所性心臓移植術(以下同所心移植と略す)を施行した.移植術後3例は翌日, 3例は7日目に犠殺し移植心を摘出して組織学的検索を加えた.
体外潅流中特にpH及びグルコース注入量は頻回のチェックと補正が必要であつたが,電解質, Hb,心電図等の変化は軽微であつた.潅流中保存心は良好な拍動を維持した.保存後の電子顕微鏡所見では,いずれの保存心もミトコンドリア,細胞核,サルコメア,毛細血管内皮細胞等の心筋微細構造は良く保たれていた.
24時間の摘出心保存は本潅流法により技術的に十分可能であり,組織学的にも心筋構造が良く保存されていることが示された.
キーワード
心臓移植, 摘出心保存法, donor心, 同所性心臓移植術, cardioplegia
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