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日外会誌. 84(4): 336-348, 1983


原著

大腸癌組織におけるCEA,LDHおよびLDH isozymeに関する研究

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

小野 成夫

(昭和57年8月7日受付)

I.内容要旨
大腸癌組織および癌腫の周囲の大腸組織のCEA,LDH,LDH isozymeを定量的に測定し,tumor markerとしての意義を検討した.単発大腸進行癌21例および対照として良性大腸疾患7例の手術摘出大腸新鮮標本を用い,癌組織の一部と癌腫の辺縁より1,2,4,6,8cmの部の大腸全層を採取した.組織をホモジナイズし, CEAはDainabottwo step RIA法により,LDHはUV法で,LDH isozymeはcellulose acetate膜電気泳動法により測定した.組織CEA量,LDH活性は組織湿重量1g当りで表示し,LDH isozyme patternはLDH isozyme ratio (LDH4+LDH5/LDH1+LDH2),H subunit%(LDH1+3/4LDH2+1/2LDH3+1/4LDH4で表示した.癌組織のCEA量は平均18,143ng/gで,癌腫の辺縁より1,2,4,6,8cmの正常大腸組織の平均は,順に1,935,643,528,498,443ng/gであつた.対照正常大腸組織のCEA量は平均411ng/gで,癌腫の辺縁より6cmまでは対照大腸組織と有意の差を認めた.癌組織のLDH活性は平均93,224 unit/gで,癌腫の辺縁より1,2,4,6,8cmの正常大腸組織の平均は,順に52,987,41,962,40,827,35,823,34,821unit/gであつた.対照大腸組織のLDH活性は平均35,338unit/gで,癌腫の辺縁より4cmまでは対照大腸組織と有意の差を認めた.癌組織のLDH isozyme ratio, H subunit%の平均は5.38,35.42で,癌腫の辺縁より1,2,4,6,8cmの正常大腸組織の平均は順に1.52,45.39,1.39,47.09,1.20,48.98,0.99,49.84,0.90,51.38で,LDH isozyme ratioは癌腫の辺縁より4cmまで,H subunit%は6cmまで,対照大腸組織と有意の差を認めた.大腸癌組織のCEA量と癌組織型との相関関係は認めなかつた.大腸癌組織の単位重量当りのCEA量と術前血清CEA値は相関しなかつたが,大腸癌腫全体の総CEA量の多い症例は,術前血清CEA値が高い傾向を認めた.

キーワード
大腸癌, tumor marker, CEA, LDH, LDH isozyme

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