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日外会誌. 84(4): 328-335, 1983


原著

CEA産生胃癌の臨床病理学的検討
血清CEAと組織CEAの比較検討及びCEAの局在について

久留米大学 第2外科教室(主任:古賀道弘教授)

西田 博之

(昭和57年9月8日受付)

I.内容要旨
胃癌患者122例に血清CEA(以下P-CEAと略)の測定,同時に,非切除を除く102例について酵素抗体法によりCEA産生能の有無を明らかにし,組織CEA(以下T-CEAと略)がP-CEAに反映するための因子について,臨床病理学的に検討した.
1. P-CEA陽性率は37%で, stage, 深達度が増すにつれて高くなりp<0.05で有意の差を認めた.一方組織型では,分化型癌,浸潤様式では,α,β,癌間質結合織では,intermedまた,リンパ節転移,脈管侵襲を有する場合に, P-CEA陽性率は高い傾向にあった.
2. T-CEA反応性を段階に分類し,その内訳は,(++) (44例) 43%, (+) (23例) 22%, (±) (20例) 20%,(-) (15例) 15%で85%にCEA染色性を認めた.
3. CEAの局在は,いわゆる分化型ではluminal border,細胞質,腺腔内depositであり,未分化型癌では細胞質であつた.
4. T-CEA検出を行った102例について, P-CEAとの比較検討を行った. stage I,IIに比しstage III,IVでは,反応性が強くなるに従いP-CEA値も上昇した.又,深達度でも同様にss以上の進行癌ではm~pm癌に比し, CEA反応性が強くなるに従いP-CEA値は上昇し, stage,深達度はある程度,P-CEA上昇のための量的因子といえる.
5. 量的因子を満足すると思われるT-CEA+,++群で深達度ss以上の癌についてP-CEA上昇のための質的因子について検討したが,++群では,組織型,浸潤増殖様式,癌問質結合織, リンパ節転移に差を認めなかったが,+群では,浸潤増殖様式で,α,β,癌問質結合織でintermedにp-CEA陽性率が高く, p<0.05で有意の差を認めた.これはP-CEAの結果と一致する所見であつた.

キーワード
CEA, 酵素抗体法, 胃癌, 癌組織CEA, 血清CEA

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