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日外会誌. 84(4): 321-327, 1983
原著
肺癌に対するN-CWS免疫療法の効果
I.内容要旨Nocardia rubraの細胞墜骨格成分(N-CWS)は強力な抗腫瘍免疫アジュバンドで,種々のマウス,ラットの同系腫瘍及び,自家腫瘍に対してBCG-CWSに比べて,より強い抗腫瘍性を誘導する.このN-CWSを用いて肺癌の手術,放射線療法,化学療法終了後に免疫療法を行い,その効果をrandomized controlled studyによつて評価した.N-CWSの投与は初回を患側胸膜腔内とし,導入療法と呼んだ.2回目以降は2~4週毎に皮内投与を行い,維持療法とした.1977年11月より1981年6月まで症例の組み入れを行い,1982年5月に最終の予後調査を行つた.評価可能症例数は手術例では対照群62例,N-CWS群49例,非手術例では対照群28例, N-CWS群32例であつた.
N-CWSの効果の判定は両群における生存期間,及び寛解期間の比較によつた.手術例全体では寛解率p<0.05,生存率p<0.10でN-CWS群が優つていた. 手術例のうち治癒手術+準治癒手術例では寛解率p<0.01,生存率p<0.05とN-CWSの効果が確認された.非治癒手術+試験開胸例ではN-CWS群の50%生存期間は対照群のそれを上まわつたが,統計学的有意差はなく,寛解率においてはp<0.10であつた.非手術例では寛解率についてのみp<0.01でN-CWS群が優つていた.治癒手術+準治癒手術例で再発様式の比較をすると,遠隔転移の抑制もある程度認められたが,特に局所再発が完全に抑制されていた.
以上のことから, ここで用いたN-CWSの投与方法はminimal residual diseaseの抑制には極めて有効である. しかし,非治癒手術例や非手術例に対しては寛解期間の延長が認められたとはいえ,投与方法の改善が必要であると考えられた.
キーワード
肺癌, 免疫療法, Nacardia rubra cell-wal skeleton, 胸膜腔内投与
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