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日外会誌. 84(3): 179-185, 1983
原著
担癌生体における脾摘の功罪に関する実験的研究
I.内容要旨胃癌の根治性を高める目的で脾摘が行われているが,その免疫学的功罪を実験腫瘍を用い検討した.
動物はSD系ラット.腫瘍は同系ラットの3-MC誘発乳癌.
実験はMRMT-1 200mg(約4×10
6個)を4週齢雌の背部皮下移植14日前,2,7,14,21日目に脾摘し,その後の腫瘍増殖程度を観察し,他群では同上各時期の末梢血リンパ球,脾細胞,胸腺細胞の免疫活性を検討した.
その結果,腫瘍増殖程度は脾摘を腫瘍移植14日前,2日目,14日目に行った群では,移植35日目で増殖抑制傾向が見られたのに対し,7日目に行った群では増殖促進傾向と生存期間の短縮が見られ,21日目に行った群では非脾摘担癌群と同様の増殖を示した.
一方同各時期のPHA幼若化能cpm値は末梢血リンパ球,脾細胞とも担癌2日目は非担癌ラットに比べ低下し,7日目は2日目に比べ有意に増加し,14日目は7日目に比べ有意に低下し,21日目はほとんど活性が消失した.胸腺細胞でもほぼ同様patternが見られた.
SI値は末梢血リンパ球ではcpm値と同じ傾向が見られたが脾・胸腺細胞では9%以下と低値であった.
NK活性は末梢血リンパ球は7日目まで低値で以降漸増したのに対し,脾細胞では担癌2日目は非担癌に比べ有意に低下し,7日目は2日目に比べ有意に増加し,その後再び低下した.
以上の実験結果,担癌ラットの脾細胞は担癌2日目(早期)と14日目(末期)以降には免疫活性低下が,7日目(中期)には活性増強が見られ,脾摘後の腫瘍増殖程度もこの影響を受け増殖抑制を示す場合と増殖促進を示す場合のあることが示唆された.
キーワード
脾摘, 脾摘の免疫学的功罪, 脾細胞の免疫活性, 実験腫瘍
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