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日外会誌. 84(1): 74-79, 1983


原著

実験的急性膵炎の治療
-経門脈的脂肪乳剤高カロリー輸液-

金沢大学 第1外科(主任:岩喬教授)

川浦 幸光 , 金子 芳夫 , 岩 喬

(昭和57年 月 日受付)

I.内容要旨
急性膵炎の治療として,経門脈的脂肪乳剤高カロリー輸液を試みた.体重10kg前後の雑種犬20頭を用い,胆汁逆流性膵炎を作製した.実験犬を4群に分けた.経静脈的脂肪乳剤非使用高カロリー輸液 (IVH)(A群-5頭),経静脈的脂肪乳剤使用IVH(B群-5頭),経門脈的脂肪乳剤非使用IVH(C群-5頭),経門脈的脂肪乳剤使用IVH(D群-5頭)とし, 1か月間実験を行い,次の結論を得た.1)血清アミラーゼ,血清リパーゼ値: A~D群とも4又は24時間に頂値を示したが, 1週間で正常値に達した. 2)血糖値およびI.R. I値: B群では血糖値が高く, I.R. I値がD群より低かった.従ってD群で血糖値の調節は容易であった. 3)血清グルカゴン値: A~D群とも24時間まで前値と変らなかったが, 1週間目に頂値を示し,それ以後は正常であった. 4)χ1アンチトリプシン値:A~D群とも正常域を変動し,有意差はなかった. 5)遊離脂肪酸(FFA):A,C群では次第に増加したが,B,D群では1週間で正常域に復した. D群の方がB群よりFFA値が低値であった.6)GPT値:A~D群とも1週間に頂値があり, 3週間で術前値に復した. 7)肝組織学的所見:A~D群とも小葉中心性壊死と脂肪変性があったが,急性膵炎によるものであり,脂肪乳剤の影響とはいえなかった.
以上の結果より,急性膵炎に対し,脂肪乳剤の経門脈的投与が安全であり,血糖およびインスリン分泌のコントロール,貯臓脂肪の分解阻止という点からみて,経静脈的投与より生理的であるとの結論を得た.

キーワード
経門脈的高カロリー輸液, 脂肪乳剤, 急性胆汁逆流性膵炎, 遊離脂肪酸

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