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日外会誌. 83(12): 1417-1428, 1982


原著

急性閉塞性化膿性胆管炎:肝・腎血行動態および血液生化学的変化を中心とした実験的研究

鹿児島大学 第2外科学教室(主任:平明教授)

古川 勉

(昭和57年6月18日受付)

I.内容要旨
急性閉塞性化膿性胆管炎は閉塞性黄疸の重症難治性合併症の1つであり,外科的減圧術なくしては救命困難な病態とされている.このような急性閉塞性化膿性胆管炎の発来機序としてエンドトキシンのCholangiovenous refluxの関与が考えられており,著者はこの病態を解明する目的で,雑種成犬を総胆管結紮早期,および晩期,すなわち黄疸の有無に分け,E.coliエンドトキシンの経胆管性,または経静脈性投与をおこない,肝・腎血行動態,ならびに血液生化学的変化を検討して,以下の結論を得た.
1) エンドトキシンの経胆管性注入,または経静脈性注入によりアナフィラクトイドの血圧低下,循環血液量減少,末梢血管抵抗上昇を来し,いわゆるhypodynamic shockを招来した.肝・腎血流量はエンドトキシン注入直後,および注入後1~2時間目に減少した.無黄疸群では門脈血流の減少に対する肝動脈血流量の代償機能がみられたが,黄疸群ではこの機能は失われていた.これら血行動態の変動が肝腎障害の一因となりうると考えた.
2) エンドトキシン注入により肝機能障害がみられたが,その程度は経静脈性注入群より経胆管性注入群の方が高度であつた.このことより,エンドトキシンの肝への障害作用に加えて,Cholangiovenous refluxを起こす機械的な胆管内圧上昇と,非生理的逆行性経路が肝細胞に著しい傷害作用をもたらすと考えられた.
3) エンドトキシン投与により血小板減少がみられ,血小板由来を主因とする肝組織中セロトニン値の上昇が観察された.このセロトニンが血管作働物質として肝,腎の微小循環に影響を与える一因となると考えた.
4) エンドトキシン投与後,血清alanine値の上昇がみられた.これはエンドトキシンがgluconeogenesis, glyconeogenesisを阻害し,かつalanineの合成を促進する結果,血清alanine濃度の上昇をもたらすと考えられた.

キーワード
急性閉塞性化膿性胆管炎, エンドトキシン, Cholangiovenous reflux, Hypodynamic shock, セロトニン

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