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日外会誌. 83(12): 1387-1397, 1982


原著

ストレス潰瘍発生機序の実験的研究
-特に加齢との関係-

神戸大学 医学部第一外科学教室(指導:斉藤洋一教授)

大坪 泰彦 , 裏川 公章

(昭和57年6月1日受付)

I.内容要旨
著者は老年者のストレス潰瘍発生機序を解明するために若ラットおよび老ラットに水浸拘束ストレスを加え,潰瘍指数,胃液酸度,血漿コルチコステロン,脳内および胃粘膜アミン,胃壁血流,胃粘膜ムコ物質を測定し検討を加えた.
老ラット群では若ラット群より早期から著明な潰瘍発生を認めた.老ラット群の胃壁血流はストレス前すでに若ラット群の約79%に減少しており,また胃粘膜ムコ物質も若ラット群よりすでに低値であつた.老ラット群の胃壁血流はストレス負荷後若ラット群に比し早期より低値となり,これに付随して胃粘膜ムコ物質も早期より著明な減少を生じた.また脳内および胃粘膜ノルアドレナリン,セロトニンは老ラット群で若ラット群より早期から著明に減少し,その減少状態が持続した.一方胃液酸度および血漿コルチコステロンはストレス負荷後老ラット群でも十分な反応を示した.
以上より,老ラット群ではストレス負荷前すでに若ラット群よりも胃壁血流,胃粘膜ムコ物質の低下を認め防禦機構が低下しているうえに,同一stressorの付与でより強いストレス状態に陥り,コリン作動性優位の状態が若ラット群より早くかつ強く生じたために若ラット群より早期から著明な潰瘍が形成されたと考える.

キーワード
老年者潰瘍, 脳内アミン, 胃粘膜アミン, 胃壁血流, 胃粘膜ムコ物質


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