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日外会誌. 83(12): 1369-1376, 1982
原著
喉頭・気管に浸潤した甲状腺癌に対する根治手術
I.内容要旨甲状腺分化癌の予後は比較的良好であり,その10年生存率は80%を越えるが,予後を左右する重大な因子の一つは局所浸潤であり,とくに喉頭・気管への浸潤である.従つて気道に浸潤した甲状腺癌に対する根治手術は甲状腺癌の手術成績を向上し予後を改菩するために重要である.
気道浸潤の診断された症例において原則として甲状腺亜全摘ならびに系統的リンパ節郭清を行つた後,頚部諸臓器(筋群,血管,神経,食道等)への浸潤に対し合併切除により局在根治が得られると判断された場合に気道合併切除を施行した.その内訳は喉頭全摘3例,甲状軟骨気管端々吻合2例,輪状軟骨気管端々吻合4例,気管気管端々吻合4例である.
癌浸潤についての術前の診断にはCTが有用であるが,骨破壊像を示すもの以外は確定診断には到らなかつた.また出血例では内視鏡的に診断が決定されるが,生検による組織学的診断は1例に確定したのみであつた.
手術に際し,全身麻酔のための挿管の可能性を知ることは重要である.1例に局所麻酔による術野挿管,1例に5mm細チューブによるjet injectionを施行した.また挿管不能時に備えて2例に人工心肺をstand byさせた.また癌浸潤の有無,切除範囲決定のための術中生検は重要である.このような術中生検により診断確定し得たのは6例である.
術後の成績は,1例が術後1年9カ月にて再発による出血のため死亡,1例が術後ストレス潰瘍による大量消化管出血のため死亡した.この2例を除く,11例は現在再発を認めず健在である.
以上のことより,甲状腺癌気道浸潤例に対し局在根治を得て気道合併切除を行うことは,手術成績向上のために有意義であると考える.
キーワード
甲状腺癌, 気道浸潤, 気道形成術
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