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日外会誌. 83(12): 1359-1368, 1982
原著
担癌生体に及ぼす手術侵襲の影響と免疫賦活剤の効果
-実験的ならびに臨床的研究-
I.内容要旨担癌宿主に加えられた手術侵襲が宿主免疫能を低下せしめ,これが残存腫瘍の増殖,転移促進につながる可能性が指摘されている.この点について動物実験的に検討した.そして手術侵襲による悪影響の防止策として手術前あるいは後に非特異的免疫賦活剤を投与して,その効果を転移防止および非特異的免疫応答能の点から検討した.さらに臨床例において手術侵襲が非特異的免疫能にいかなる影響を及ぼし,そして非特異的免疫賦活剤の術前ないし術後投与がそれに対していかなる効果を与えるかについて検討した.
SD系雌性ラットの一側背部皮下にMRMT-1 200mgを移植する実験系を用い,担癌2週ラットに腫瘍切除単独群,腫瘍切除+30分間開腹負荷群を作成し,術後のPHAリンパ球幼若化能,肺・リンパ節転移率を検討した.さらに免疫賦活剤OK-432の処置前あるいは処置後投与を行い同様の検索を行つた.その結果,開腹負荷群では腫瘍切除単独群に比べ術後のPHAリンパ球幼若化能の低下がみられ,同時に肺転移率が増加した.しかしOK-432を処置前投与することにより,開腹負荷群における術後PHAリンパ球幼若化能の低下は防止され,同時に肺転移率の増加もみられなかつた.
胃・大腸癌71例についてOK-432+PSKを用いた術前後免疫療法施行群,術後免疫療法施行群,非免疫療法群の,乳癌については免疫療法を施行しなかつた12例の非特異的免疫パラメーターの術後変動を検討した.その結果,免疫療法を施行しなかつた胃・大腸癌症例では,術後1,2週目にPHA幼若化能の著しい低下を認め,1カ月後に術前値に回復するpatternを示し,乳癌症例では手術による低下は明らかではなかつた.かかる胃・大腸癌術後のPHA幼若化能低下は,術前からの免疫療法により防止された.
キーワード
手術侵襲, 非特異的細胞性免疫能, ラット乳癌, 腫瘍転移, 非特異的免疫賦活剤
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