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日外会誌. 83(11): 1353-1358, 1982


原著

腓腹動脈に関する解剖学的ならびに臨床的考祭

東京医科歯科大学 第1外科(主任:毛受松寿教授)
*) 東京医科歯科大学 第2解剖
**) 東京医科歯科大学 放射線科

岩井 武尚 , 佐藤 彰治 , 山田 武男 , 佐藤 健次*) , 鈴木 宗治**)

(昭和57年5月15日受付)

I.内容要旨
腓腹動脈(sural artery)は,膝窩動脈の枝で,排腹筋への筋枝であるが,その分枝位置,分枝数は変化に豊み解剖学的, 臨床的意味づけに関しては報告が少ない.
われわれは,撮影良好な下肢動脈撮影症例50例56肢と解剖実習屍体11体22肢の観察から得た排腹動脈の読影および解剖所見を検討した.
その結果,排腹動脈の分枝型を4型に分けることができた.実習屍体11体のうち1体には両側性膝窩動脈捕捉症候群があつた.動脈撮影所見では,排腹動脈の分枝位置は大腿骨膝蓋面下端より, 内側枝は19.6±9.8mm,外側枝は18.3±8.6mmであり,1本で分枝する例では26.8±10.2mmであつた.一方,屍体を含めて大腿骨内側上顆中枢寄り陥入点よりの分枝状態は,内側枝21.5±14.4mm,外側枝22.9±9.3mm,1本分枝例では13.7±9.3mmであつた.解剖実習屍体での分枝状態をみると,3本分枝例が多く9肢であつた. また,内側へ2本分枝する例が多かつた.
以上の所見と,膝窩動脈と腓腹筋の発生学的考察により,排腹動脈の分枝状態,分枝異常や膝窩動脈捕捉症候群の発生,血管造影所見などについても説明し得ると考えられた.

キーワード
腓腹動脈, バージャー病, 膝窩動脈捕捉症候群, 膝窩動脈血行再建術


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