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日外会誌. 83(11): 1344-1352, 1982
原著
大動脈・腸骨動脈領域閉塞症の外科治療経験
I.内容要旨川崎医科大学胸部心臓血管外科教室で過去7年間に経験した大動脈・腸骨動脈領域閉塞症は86例で,うち82例が閉塞性動脈硬化症で,4例が急性動脈塞栓症であつた.性別は男性81例,女性5例で,年齢は42~89歳,平均64.7歳であつた.
来院時の下肢阻血症状の重症度はFontaine1,2,3,4度が各々0,67.1,17.6,15.3%で,動脈造影所見を閉塞性病変の範囲が遠位側腹部大動脈ないし総腸骨動脈に限局しているもの,外腸骨又は総大腿動脈に及んでいるもの,深又は浅大腿動脈以下にまで及んでいるものを,それぞれI,II,III型と分類すると,各々21.0,23.4,55.6%であつた.
手術は76例に対し前後93回施行され,手術死亡率は7.5%であつた.手術症例のうちThromboendarterectomy(TEA),Anatomical bypass (AB),Extra-anatomical bypass (EAB)は各々15,30,26例に施行された. TEA,AB,EAB施行例の各々の手術死亡率は6.7,10.0,7.7%,早期閉塞率は0,6.7,15.4%,4年累積開存率は70.2,82.6,66.3%で総て統計学的有意差は認められず,手術成績はほぼ3群に差はないと考えられた.
われわれは動脈硬化による大動脈・腸骨動脈領城閉塞症に対する手術適応としてgood-riskで閉塞性病変が比較的限局性の症例にはTEAを,広範囲な症例にはABを,またpoor-risk症例にはEABを施行する方針であるが,以上の成績よりほぼ妥当であると考えられた.また付加手術として腰部交感神経節切除術を9例に,Profundaplastyを8例に,Femoro-popliteal bypassを1例に施行したが,下肢阻血症状の高度な症例には腰部交感神経節切除術を,また下肢動脈に閉塞性病変が及ぶ症例にはまずProfundaplastyを,さらに必要があればFemoro-popliteal bypassを追加施行すべきであると考えている.
キーワード
大動脈・腸骨動脈領域閉塞症, Thromboendarterectomy, Anatomical bypass, Extra-anatomical bypass, 付加手術
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