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日外会誌. 83(8): 709-722, 1982


原著

脂肪乳剤のエネルギー代謝に関する実験的研究

東京大学 医学部第3外科学教室(指導教官:近藤芳夫教授)

芳田 一宏

(昭和57年3月30日受付)

I.内容要旨
14C標識および非標識の脂肪乳剤,ブドウ糖,アミノ酸をいろいろに組合せ,種々な条件のラットの静脈内にone shotで投与し,標識栄養素の血中消失速度および呼気中14CO2排出量の検索より,それらの代謝を追及して以下の成績をえた.
1.脂肪乳剤のエネルギー代謝,すなわち燃焼は投与直後から始まる.脂肪乳剤の燃焼は投与量によつて異なり,比較的大量投与の場合には,燃焼率と投与量の間に相関々係がなく,燃焼のピークは投与後70分前後にあるが,比較的小量投与の場合には,投与量が少ない程燃焼のピークが左方へ偏移して燃焼は促進される.しかし,24時間絶食時の投与後5時間までの総燃焼率は投与量と関係なく,46~47%である.2.脂肪乳剤のエネルギー代謝は,その血中消失速度と必ずしも相関しない.3.脂肪乳剤は絶食時によく燃焼し,摂食状態では燃焼が低下する.24時間絶食時に脂肪乳剤はブドウ糖を等量に投与する場合,エネルギーとして最もよく利用されるが,ブドウ糖投与が多くなると,脂肪乳剤のエネルギー代謝は抑制される.4.ブドウ糖の燃焼は絶食時に抑制され,摂食時に促進されるが,24時間絶食時に脂肪乳剤を投与しても,ブドウ糖の燃焼に影響を及ぼさない.5.アミノ酸の燃焼はアミノ酸の種類によつて異なるが,24時間絶食時に脂肪乳剤を投与しても,アミノ酸の燃焼に影響を及ぼさない.6.手術侵襲の影響について,侵襲後24時間までの急性期では,脂肪乳剤の血中消失が遅延するが,そのエネルギー代謝に有意の変動はみられない.

キーワード
脂肪乳剤, エネルギー代謝, 14CO2回収率, 手術侵襲, 血中消失速度

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