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日外会誌. 83(7): 665-676, 1982


原著

進展様式からみた膵頭部癌切除症例の検討

京都大学 医学部第1外科(主任:戸部隆吉教授)

真辺 忠夫 , 鈴木 敞 , 内田 耕太郎 , 戸部 隆吉

(昭和57年3月15日受付)

I.内容要旨
1966~1981年に教室で扱つた膵頭部癌切除例は42例(膵頭切除19例,膵全摘23例うち門脈合併切除10例)で切除率28.4%,生存率は1年44.4%,2年36.7%,3年28.0%,5年14.3%であつた.切除例について腫瘍の大きさ(T),肉眼的膵被膜浸潤(S),動脈系浸潤(A),門脈系浸潤(V),膵後面組織への浸潤(Rp),十二指腸壁浸潤(DU),組織型,腫瘍の浸潤増殖様式(INF),リンパ管侵襲(ly),静脈侵襲(v),組織学的リンパ節転移(n)各因子およびStageと予後の関係を膵癌取扱い規約に従い検討した.
腫瘍の大きさは組織型および他の因子との関連において予後を規定し,膵管癌ではT1,T2例に比しT3例の予後が不良であつた.膵被膜浸潤についてはS0の平均生存期間は43.8ヵ月,S1 28.6ヵ月,S2 8.6ヵ月,S3 6.9ヵ月で予後とよく関連した.動脈系,門脈系浸潤ではA(-)29.7ヵ月,A(+)8.5ヵ月,V(-)36.5ヵ月,V(+)8.3ヵ月で浸潤例の予後が不良であつた.膵後面組織への浸潤例,十二指腸壁浸潤例の予後も不良であつた.組織学的には高度に分化したものの予後が良好で,腫瘍の浸潤増殖様式についてはINF α 65.8ヵ月,INF β 12.5ヵ月,INF γ 10.6ヵ月で,リンパ管侵襲,静脈侵襲に関しては,ly(-)31.3ヵ月,ly(+)6.0ヵ月,v(-)32.7ヵ月,v(+)9.0ヵ月で侵襲例の予後が明らかに悪かつた.リンパ節転移率は76.2%で,17ab,13ab,8,12,14ab,に転移率が高く,17ab,16,14ab,13abに転移度が高かつた.n0の平均生存期間は57.0ヵ月,n1 16.7ヵ月,n2 4.0ヵ月,n3 6.0ヵ月であつた.Stage Iの平均生存期間は54.0ヵ月,Stage II 34.9ヵ月,Stage III 20.3ヵ月,Stage IV 12.5ヵ月で,各Stageとも膵全摘例に長期生存例が多い傾向を示した.門脈合併切除例(10例)はいずれもStage III,IVで5例は9.0ヵ月以内に再発死したが,2例は他病死,3例は術後1.5-24ヵ月現在生存している.膵癌の予後は,リンパ節転移を中心とした諸因子により規定されるが,拡大手術により,膵癌の予後をいかに改善するかが今後の課題となる.

キーワード
膵頭部癌の予後規定因子, 膵頭十二指腸切除, 膵全摘, 門脈合併膵切除

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