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日外会誌. 83(7): 605-612, 1982


原著

膜型血漿分離装置を用いた免疫複合体の除去システムの開発と臨床応用

東北大学 第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

浅沼 義博

(昭和57年3月11日受付)

I.内容要旨
肝不全や自己免疫疾患の病因物質としては蛋白結合物質や各種抗体,免疫複合体などの高分子物質が挙げられており,従来の透析法,限外沪過法では除去できない.また遠心法を用いた血漿交換は,これらの除去には有効であるが大量の血漿製剤を必要とすること,肝炎やアレルギー反応を惹起することなど問題がある.筆者はcellulose acetate膜を用いた中空糸膜型血漿分離装置と活性炭及び樹脂を組み合わせたシステムを開発して肝不全患者に適用し,蛋白結合物質の除去と臨床症状の改善を認めた.更に膜を用いて慢性関節リウマチの治療を行なつた.即ち免疫複合体やリウマチ因子が免疫グロブリンより成る高分子蛋白であり膜を用いてアルブミンの分離が可能であることに着目し,異なつた孔径の穴をもつ2種の膜を組み合わせて高分子蛋白のみを除去しアルブミンは患者に戻す2重沪過方式を考案した.更に分離した血漿を冷却して異常蛋白をcryoglobulinとして凝集沈殿させてその除去効率をあげた連続冷却沪過法(Continuous Cryofiltration,以下CCF)を開発した.ステロイド,免疫抑制剤も奏効しない悪性関節リウマチ患者に1年間50回のCCFを施行した.免疫複合体は始め2,296u/ml(正常は74u/ml以下)であつたが1回のCCFで平均65%減少し,7週目で500u/ml,11週目で200u/mlとなつた.cryoglobulinは始め3mg/mlであつたが3週目で0.1mg/mlとなり,免疫グロブリンも1回のCCFで約35%減少した.免疫複合体の減少に伴い疼痛も著明に改善した.11週目に手術のためCCFを3週間中止したところ免疫複合体,cryoglobulin,免疫グロブリンはすべて増加したがCCF再開により再び改善し,現在は2週間に1回のCCFですべて正常範囲内にある.本療法により大量の血漿製剤を必要とせず,安全にしかも有効に血中の免疫複合体を除去することが可能であることが判明した.

キーワード
免疫複合体, cryoglobulin, 慢性関節リウマチ, 連続冷却沪過法

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