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日外会誌. 83(6): 556-566, 1982


原著

胃分泌機序
-とくに腸相に関する実験的研究-

東京大学 医学部第3外科学教室(主任:近藤芳夫教授)

伊原 治

(昭和57年2月24日受付)

I.内容要旨
消化期における胃分泌機序のうち,腸相については従来より不明の点が多い.そこで著者は,腸相の主要因子,腸相と胃相の関係,腸相の分泌経過,腸相の化学刺激剤の作用機序,等を明らかにすることを目的とし,イヌを用いて,種々の手術操作を加え実験を行つた.
実験(I)では,十二指腸瘻犬を作製し,腸相が胃分泌に占める比率を出来る限り生理的な条件下で測定した.併せて内在ガストリンとの関係について検討した.実験(II)では腸相の最も強い化学的刺激剤とされているアミノ酸の作用機序を解明するため,十二指腸瘻犬で経静脈投与と経腸投与の効果を比較した.ついで消化管ホルモンを完全に欠落させた特殊なモデル犬を作製し,併せて迷走神経切離術を組み合わせることによつて,刺激効果を比較検討した.
この結果,1)消化期における胃相と腸相の比は,およそ3:1である.2)胃相と腸相には相乗作用が認められる.3)腸相は刺激開始から反応まで潜伏期がある.4)腸相を支配している主因は,内在ガストリンであるが,腸内で消化吸収されたアミノ酸も,刺激因子となり得る.5)アミノ酸の腸相としての作用は,消化管ホルモンを介在しないで迷走神経と協同して胃酸分泌を刺激する.以上の結論を得,腸相分泌機構の一端を解明した.

キーワード
胃分泌, 腸相, ガストリン, アミノ酸, 迷走神経

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