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日外会誌. 83(6): 548-555, 1982
原著
選択的近位迷走神経切離術の胃酸分泌能,血中ガストリン放出反応,胃排出能,下部食道括約筋機能に及ぼす影響
-特に迷切後嚥下困難症状について-
I.内容要旨緊急手術例を含めた胃,十二指腸潰瘍67例を対象とし,選択的迷走神経切離術を行い,高頻度に,術後一過性の嚥下困難症状の発生を認めた.そこで,術前,術後経時的に,胃酸分泌能,血中ガストリン動態,胃排出能,下部食道括筋機構につき検討を加えた.我々の行つた術式では,BAOでの減酸効果が不良であつたが,MAO,I-PAOでは,有意な減酸を示した.血中ガストリン値は,SPV例では高値を示したが,SPV+D例,SV+Ant. 例では変動を示さなかつた.胃排出能は,SPVでは,有意な亢進は認められなかつたが,SPV+D,SV+Ant. では,ドレナージ効果の為に亢進を示した.食道内圧測定では,(1)嚥下性弛緩の減弱,(2)高圧帯の長さの延長,(3)curlingおよびsegmental contractionの発生頻度の増加,(4)嚥下より嚥下性弛緩までの反応時間の延長,(5)外因性ガストリンに対する反応性の低下が認められた.一方,嚥下困難症状は,術後1カ月には65.7%に認められたが,6カ月後にはほぼ消失した.術式別では,十二指腸潰瘍穿孔例のSPV+patch例全例に認められ,SV+Ant. 例では33%であり,傍食道の炎症の有無,ドレナージ効果が嚥下困難症状の発現に関与しているのではないかと考えられた.以上より迷走神経切離術の術後の嚥下困難症状の発生原因として,主に迷走神経切離によるdenervationの結果として起る嚥下性弛緩の減弱,curlingおよびsegmental contractionの発生頻度の増加,嚥下より嚥下性弛緩までの反応時間の延長が考えられ,それに傍食道の手術操作及び炎症が加わつた為と考えられた.
キーワード
postvagotomy dysphasia, 選択的近位迷走神経切離術, 下部食道括約筋機能
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