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日外会誌. 83(6): 515-523, 1982


原著

Pulsatile Assist Deviceを応用した拍動ポンプ------バイパス方式の相異による血行動態に及ぼす効果の比較検討

産業医科大学 第2外科
*) 国立埼玉病院 心臓血管外科
**) 慶応義塾大学 外科

小田桐 重遠 , 川原 英之 , 永田 真人 , 石倉 義弥 , 村上 勝 , 吉松 博 , 勝本 慶一郎*) , 井上 正**)

(昭和57年2月13日受付)

I.内容要旨
体外循環におけるexternal balloon pumpingとして開発されたPulsatile Assist Device(PAD)の前後に弁機構を付属させair driven型の拍動ボンプとして応用し,心拡張期にのみ送血する方法を開発した.本研究では,われわれのポンプを用いV-Aバイパスを行つた時(VABP群),左心バイパスを行つた時(LHBP群),さらにはローラーポンプを用いた定常流左心バイパスを行つた時(LHB群),の低流量時における血行動態に及ぼす影響について比較検討を加えた.
それぞれのバイパス群において雑種成犬各10頭ずつを用い,VABP群では右房脱血,左心バイパス群は左房脱血とし送血はいずれの群も大腿動脈を用いた.VABP群,LHBP群は駆動装置としてDatascope社製System80を用い駆動は心電図上R波に同期させた拡張期送血とした.データーは健常犬におけるバイパス流量約45ml/kg/min,程度の低流量時において比較検討を行つた.
手技的な点,簡便さ,手術侵襲が少なくてすむ事などの点ではVABP群の方がまさつており,血行動態の面からは総灌流量の増加という点では一番大きな効果を示した.左房圧については左心バイパス群の減圧効果は大きく,しかもcounterpulsationを併用する方がより大きな効果を示した.
左室のunloading効果に関しては統計学的有意差は認めなかつたもののLHBP群における左室圧波形での2相性の減圧効果からみて,左心バイパスを行う際にもcounterpulsationを併用する方が優利であることが示唆された.
以上われわれの開発した拍動ボンプの低流量時における血行動態への影響を検討したが,本法は,IABP法の効果の及ばない重篤な心原性ショック例,または大動脈バルーンの挿入不能な症例に対しては有効な機械的補助手段法であると考える.

キーワード
補助循環, 左心バイパス, V-Aバイパス, Pulsatile Assist Device (PAD), pulsatile pump

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