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日外会誌. 83(6): 507-514, 1982


原著

反回神経麻痺の臨床的並びに実験的研究
第2編,実験編反回神経縫合の筋電図学的研究

広島大学 医学部第2外科学教室(指導:江崎冶夫教授)
広島大学 医学部耳鼻咽喉科学教室(指導:原田康夫教授)

牛尾 浩樹

(昭和57年2月17日受付)

I.内容要旨
反回神経縫合例では,声帯運動が回復しなくても反回神経切断放置に比べ,嗄声の程度が軽い事に我々は気付いた.
その原因を究明する為に,我々は成犬を用いて一側反回神経を切断後,7-0 monofilament nylon糸を用い,直ちに端々縫合を行なつた.これらのうち,一年以上生存した実験犬7頭について声帯運動を観察し,内喉頭筋の筋電図をとり検討した.
その結果,以下の如く機能的にも形態学的にも神経縫合例が神経切断放置例に比べ優れている事が判つた.
1) 神経縫合例を筋電図学的に検討したところ,misdirected regenerationは避けられない事が判つた.しかし,必らず正常再神経支配も存在していた.従つて.発声時に声帯は可動しなくても声帯内筋の緊張は出来るので,発声時に声帯の粘膜波動が生じる.一方,神経切断放置例は脱神経状態である為,発声時に声帯内筋の緊張が出来ず,粘膜波動が生じない.この発声時における声帯内筋の緊張の有無,即ち,粘膜波動の有無により嗄声の程度が異なつたものと考えられた.
2) 神経縫合例では,声帯内筋の萎縮が予防され,発声時に両声帯間隙が少ない.しかし,神経切断放置例では,患側の声帯内筋が萎縮し,発声時に両声帯間隙が広い.即ち発声時の両声帯間隙の差により嗄声の程度が異なつたものと考えられた.

キーワード
反回神経縫合, 神経過誤再生現象(misdirected regeneration), 声帯内筋萎縮, 声帯内筋緊張, 声帯粘膜波動

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