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日外会誌. 83(5): 439-445, 1982
原著
広汎な解離性大動脈瘤に対する開窓形成人工血管置換術
I.内容要旨解離性大動脈瘤は解離の発生部位,進展,大動脈主要分枝に対する影響などにより,手術々式を選択しなければならないので,その外科治療成績は必ずしも良好でない.DeBakey III b型解離性大動脈瘤の2例に対し,腎動脈分岐部直下で眞腔と解離腔との隔壁切除,腹部大動脈人工血管置換術を行い,良好な結果を得た.症例1は57歳,男性.腰痛および腹痛を主訴として入院した.高血圧があり,Serpasil-ApresolineやFluitranの投与では収縮期体血圧を調節し得ず,Arfonadの持続点滴で体血圧を120Torrに調節し得た.しかし,患者は次第に無気力となり,腹部の瘤は著しく拡大し,破裂が危惧されたので手術を行った.
症例2は63歳,男性.腹痛および腹部腫瘤で入院した.既往歴として1年前に脳出血をきたし,左片麻痺が残った.2症例とも大動脈造影でDeBakey III型解離性大動脈瘤と判明した.いずれも全身状態不良なため,Entry閉鎖,胸部下行大動脈人工血管置換術は過大侵襲と判断し,腹部大動脈の瘤に対してのみ手術を行った.すなわち,腎動脈下腹部大動脈を遮断し,遮断直下で大動脈を横切し,眞腔と解離腔との隔壁をできるだけ中枢側で切除した後,Y字型Cooley double velour人工血管に置換した.症例1では大動脈遮断時の胸部大動脈瘤破裂を危惧し,開胸も同時に行い,腹部大動脈再建を行った.胸部大動脈瘤を人工血管の布でWrappingした.術後8~22カ月の現在,2例とも元気に日常生活を送っている.本術式はReentryを開大するので解離腔内圧を減じ,且っ腎動脈分岐状態が術前検査で不明な症例や不身状態が不良な症例には試みる術式の1つであろう.
キーワード
解離性大動脈瘤(DeBakey IIIb)Fenestration, Wrapping
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