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日外会誌. 83(3): 297-307, 1982


原著

閉塞性黄疸時に発生する急性腎不全に関する研究

愛媛大学 第2外科(指導:木村 茂教授)

上甲 幸夫

(昭和56年11月4日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸患者の術後に急性腎不全を合併することが他の疾患の術後に比べ高い.この原因を追求するため黄疸や胆道感染を示している例の腎機能につき臨床的,実験的に検討を加えた.
臨床的には肝,胆,膵疾患者60名を対象とした.この結果,黄疸が高度になる程,腎機能は低下する頷向がみられ,とくに高齢者において著明であることが自由水クリアランス測定により認められた.また閉塞性黄疸患者では術後の腎機能低下が高度でその回復も非黄疸患者に比べ遅延する傾向がみられた.対象とした患者の胆汁の細菌感染率は,胆のう胆汁48.1%,胆管胆汁70.2%で平均59%であり,グラム陰性菌が約90%を占めた.肝腎症候群を発生した患者6名の胆汁中の細菌検索では全例にグラム陰性菌の存在を認め2例では血液のLimulus testが陽性であった.
実験的には,雑種成犬を用い次の2群に分けた.a)総胆管結紮約4週間後の閉塞性黄疸犬の胆管内ヘエンドトキシン5mg/kgを注入した.b)総胆管結紮直後の非黄疸犬の胆管内ヘエンドトキシン5mg/kgを注入した.いずれも生食水を使用し胆管内圧30cmH2Oに上昇した直後よりショック状態となり心搏出量,血圧,腎血流量の低下がみられた.同時に血中,尿中のLimulus testは陽性となった.そして約1時間後に無尿となり2~4時間後に全例死亡した.エンドトキシン注入前において,a)閑塞性黄疸犬群はb)非黄疸犬群と比較して循環動態の低下および自由水クリアランス測定により腎機能のより高度の低下が認められた.胆管内圧上昇によりエンドトキシンは血中,腎,尿中へと移行し循環動態の低下をひきおこし,その結果急性腎不全を発生さすものと解させる.

キーワード
閉塞性黄疸, 胆道感染, エンドトキシン, 急性腎不全, 自由水クリアランス

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