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日外会誌. 83(3): 257-263, 1982


原著

骨転移を伴う乳癌症例に対するcalcitonin投与の有用性について

滋賀医科大学 第1外科

塩貝 陽而 , 堀沢 昌弘 , 谷 徹 , 山口 昇 , 上原 鳴夫 , 角田 富士男 , 橋本 敏和 , 恵谷 敏 , 小玉 正智

(昭和56年9月24日受付)

I.内容要旨
Calcitonin(以下CTと略す)は甲状腺C細胞から分泌されるペプタイドホルモンで血清Ca低下作用を有することはよく知られている.だがCTはまた骨形成促進作用を有し,骨粗鬆症・Paget病・Polyostotic fibrous dysplasiaなどの整形外科疾患に使用されて疼痛の緩和や病勢進行阻止などの効果が得られている.
今回同様の目的で乳癌骨転移による疼痛や運動障害および病的骨折を有する2症例にブタCTを投与し,1例ではosteolytic metastasesを生じた腰椎骨に著明なcalcificationが起こりcalcificationの進行に伴なって疼痛が軽減し,他の1例では右大腿の病的骨折巣における著明な仮骨形成を認め剖検で得た病的骨折巣の病理組織検査でX線所見に相当する旺盛な骨新生像を確認した.
通常osteolytic metastasesはosteolysisがとどまることなく進行するものであるにもかかわらずCT投与後osteolytic lesionsに石灰化があらたに生じたこと,およびosteolytic metastasesの病的骨折巣において活発な骨新生像が確認されたが,それらの変化はいずれもCTの骨形成促進作用によると考えられる.
CTの骨形成促進作用に関しては多くの実験結果が報告されているが,CTの臨床応用としては高Ca症の治療が多かった.
しかし今回供覧した2症例からも判るようにCTの骨形成促進作用を利用しての悪性腫瘍骨転移の治療は疼痛の軽減をもたらし,また日常生活への復帰を可能にするなどのメリットが得られる.したがつて悪性腫瘍の骨転移症例に対してCT投与は他の補助療法と併用し試みられるべき治療であろう.

キーワード
Calcitonin, Breast cancer, Bone metastases

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