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日外会誌. 83(2): 196-206, 1982


原著

乳腺疾患の補助診断法に関する実験的ならびに臨床的研究

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)部門(指導:服部孝雄教授)

中野 章

(昭和56年10月25日受付)

I.内容要旨
乳腺疾患の診断においては,補助診断法を活用し,予後に悪影響を及ぼす不手際な生検を避けるべきである.われわれは補助診断法としてマンモグラフィー,エコーグラフィー,サーモグラフィーを併用し診断を行っているが,乳がん103例,組織診断の判明している良性症例36例について,各々の診断能力を検討するとともに,基礎実験において解析能力の検討を行った.
マンモグラフィーにおいて,鮮明な画像を得るためには被写体厚の減少は不可欠であり,この目的のためにスポット撮影に併用するわん曲鑷子を考案した.これにより腫瘤の描出能力の向上を認め,石灰化像の描出率も51.4%と高率となった.
エコーグラフィーの正診率は91.3%であり,読みすぎ率は16.1%と3つの診断法のうち最も低かつた.寒天モデルでの実験において,5mm以下の腫瘤は捉えることができないことが判明したが,生体に無害で手軽に検査できる有用な方法である.
サーモグラフィーの正診率は82.5%と触診法の診断率と同じであった.読みすぎ率(20.6%),見逃し率(17.5%)と3つの診断法の中では最も高く,乳腺炎とがんとの鑑別が困難など,単独では信頼がおける検査法といえないが,他の2つの診断法と併用すると有効な検査法である.
3つの補助診断法所見を,定量的,総合的に判定するために,点数制を考案した.この点数基準の妥当性を数量化第II類の方法による理論値と比較することにより検討したが,理論値と高度に相関し(p<0.005),臨床所見ともよく合致した。
3つの補助診断法を併用し,その所見をスコア制により総合的,客観的に判定することは,乳がんの早期発見,不必要な生検をさけ生検から根治術までの期間を短縮するために有用である.

キーワード
乳腺疾患, マンモグラフィー, エコーグラフィー, サーモグラフィー, スコア制

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