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日外会誌. 83(1): 113-121, 1982
原著
膵管損傷の実験的研究
I.内容要旨雑種成犬を用い,主膵管に各種の損傷を与えて生存期間,死因,血清アミラーゼ値,膵管造影,膵管損傷部及び尾側膵の肉眼的並びに組織学的変化につき検索し,膵管損傷の治癒機転について検討した.
主膵管が切開されて一部壁の連続性が保たれていたり,横断されても膵管欠損部が短い時は,3~4日以内に周囲臓器の癒着や搬痕化がおこり,多くは狭窄を示しながら膵管は開通しており,尾側膵の変化はほとんどみられず軽症に経過した.
主膵管が切除されて欠損部が長いと,3~4日以内におこる周囲臓器の癒着や搬痕化の結果,膵管は閉塞し尾側膵では膵管拡張と実質の萎縮硬化が著明で,膵外分泌機能障害を現わして重症に経過した.従つて,この種の膵管損傷に対しては早期より適切な外科的治療が必要と考えられた.さらに,主膵管切除後膵管欠損部をtubeで橋渡しすると膵管損傷部は多くは開通しており尾側膵は軽度の線維化を示したにすぎず,膵管内tube挿入法の有効性が示された.一方,tubeの閉塞したものもみられこのtube挿入法には限界があることも指摘された.
膵管損傷の合併症として,血腫や膿瘍の他に仮性嚢胞の発生がみられ,その内容液の性状や組織学的所見から仮性嚢胞の発生の上で血腫や膿瘍との関連が考えられた.
血清アミラーゼ値は全例に上昇がみられ,膵管損傷の診断の上で有力な指標と考えられた.さらに,血清アミラーゼ値が高値を持続したり再上昇する時は仮性嚢胞の発生が示唆された.
また,主膵管の損傷と共に乳頭機能が損傷されると,激症膵炎を来す危険が大きいことが指摘された.
キーワード
膵管損傷, 血清アミラーゼ値, 膵管造影, 仮性嚢胞, 外傷性膵炎
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