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日外会誌. 83(1): 66-77, 1982


原著

胃癌患者の栄養評価に関する臨床的研究
-術前栄養状態の計量化による術後合併症発生予測指数の作成-

順天堂大学 第1外科学講座(主任:城所 仂教授)

佐藤 真

(昭和56年9月7日受付)

I.内容要旨
胃癌患者275名について栄養評価を行い癌の進行度と術前栄養状態の関係について検討した.また,いかなる栄養指標が術後合併症発生に関与しているかを検討し,その結果より術後合併症発生に関する予測式を作成した.
栄養指標として理想体重比,通常体重比(%uswt),上腕三頭筋部の皮下脂肪の厚さ,血清総蛋白(T.P),アルブミン(Alb),トランスフェリン(TRANS),上腕筋囲,クレアチニン・身長指数,リンパ球数(Lymph. count),PHA皮内反応,PPD皮内反応,血清鉄,亜鉛値(Zn)を測定した.その結果,以下の知見を得た.
① 術前栄養指標は癌のStageの進行とともに低下傾向を示し,StageIに比しStageIII以上の進行した胃癌でほとんどの指標に有意な低下が見られた.また健常人との比較ではT.P.,Alb,TRANSなどの臓器蛋白と筋肉量の低下が著明であった.
② 胃癌手術患者143名(phaseI)について合併症を起こした群と起こさなかった群の術前栄養指標を比較すると,AGE,T.P.,Alb,Zn,%uswtに有意差が見られた.
③ phase Iの患者において合併症群と非合併症群を判別する関数式を14項目の栄養指標より作成し,栄養学的手術危険指数(NRI)=10.7Alb+0.0039Lymph.count+0.11Zn-0.044AGEの式を得た.この結果,NRI55以下をhigh risk群,NRIが60より大きいものをlow risk群とした.
④ 胃癌手術患者73名(phaseII)のNRIを算出し,その妥当性について検討した.その結果high riskとlow riskの合併症発生率に有意差が認められNRIの妥当性が確認された.
⑤ 術前Intravenous hyperalimentation(IVH)例においてNRIの変化をみると非合併症例では術前有意にNRIが好転したが,合併症例ではIVH施行にもかかわらずhigh risk内にとどまつていた.
以上NRIは術前に術後合併症発生の危険性を予測するとともに,術前術後のnutritional supportの適応の決定や効果判定に役立つものと思われる.

キーワード
胃癌, 栄養評価, 術後合併症, 合併症発生予測指数, nutritional support

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