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日外会誌. 82(12): 1447-1454, 1981
原著
膵組織片移植の移植部位に関する実験的研究
I.内容要旨自家膵組織片の至適移植部位を検討する目的で,膵組織片を脾内,門脈内,肝内に移植し,移植膵 の内外分泌組織の機能的,形態的変化を追求した.
方法:雑種成犬22頭に膵全摘を施行し,その内5頭を対照群とし,残りを脾内移植群6頭,門脈内移植群6頭,肝内移植群5頭の3群に分けた.移植後空腹時血糖,血清アミラーゼ,肝機能検査を定期的に行い,移植後2週目と2ヶ月目にブドウ糖負荷試験を施行した. さらに,胆嚢内胆汁および総胆管内胆汁採取と採血を行いアミラーゼ値を測定した.ついでPancreozymin-Secretin負荷後の総胆管内胆汁中アミラーゼならびに血清アミラーゼの動態を観察した.これらの検査後屠殺し,肝臓または脾臓を摘出し,形態学的検査に供した.
結果: 膵全摘群は8±2.4日で全例死亡した.脾内,門脈内,肝内移植群の最長生存例はそれぞれ322 日,342日,120日であつた.ブドウ糖負荷試験では脾内,門脈内移植は良好な耐糖能を示したが,肝内移植群はやや不良であつた. 2週目と2カ月目の耐糖能の比較では,いずれの部位でも経過とともに悪化の傾向を示した.胆嚢内,総胆管内胆汁中アミラーゼ値は脾内, 門脈内移植群では対照群と同様な値を示したのに対し,肝内移植群では高値を示し,かつPancreozymin-Secretin負荷に反応して胆汁中アミラーゼ値の著明な上昇が認められた.組織学的検査にて肝内移植後2カ月以上経過した例では豊富なZymogen顆粒をもつた腺房よりなる外分泌組織が増生し,膵小葉構造を形成していた.脾内移植群でも外分泌組織は増生を示すが,電顕的にZymogen顆粒合成能低下と分泌障害を示唆する所見をえた.
結論:脾内および門脈内移植では内分泌機能維持に,肝内移植では外分泌機能維持に好適な移植部位である.そこで,同時に肝内と脾内または門脈内へ移植することより膵内外分泌機能の維持が可能となり, surgical diabetesの防止策として有力な手段となりうると考えられた.
キーワード
膵組織片移植, 膵移植部位, 膵内分泌組織の生着率, ductal drainage機構
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