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日外会誌. 82(11): 1346-1353, 1981
原著
腸管切除後の胆汁酸代謝に関する臨床的研究
I.内容要旨空腸,回腸, または回盲部を切除(短絡)した症例33例を対象として,胆汁中の胆汁酸分析を行い,腸管の切除(短絡)部位やその長さによる胆汁酸代謝や脂肪吸収の差異について検討を加えた.
胆汁中の総胆汁酸濃度はこれらの腸管切除後一般に低下したが,空腸外瘍群,小腸広範切除群や切除範囲の長い回腸切除群ではとくに著明に低下しており,この際抱合胆汁酸G/T比が上昇していた.またBauhin弁を欠如する回盲部切除群,回腸人工肛門群などでは総胆汁酸濃度は回腸末端切除範囲が短くても低下していた.胆汁中の胆汁酸分画組成比をみると,空腸外瘻群,小腸広範切除群, 回腸切除群,回腸人工肛門群ではdeoxychol酸が欠如し,回盲部切除群ではdeoxychol酸の割合が減少していた.空腸切除群でも総胆汁酸濃度は低下したが,程度は最も軽度で.組成比は対照群と差がなかつた.
131I-triolein便中排泄率と回腸切除範囲は有意の相関を示した.空腸外瘻群や回腸切除群では,胆汁酸濃度の低下に脂肪の吸収面積の減少が加わり脂肪吸収障害が高度になったと考えられた. 一方,回盲部切除群,回腸人工肛門群,さらに回腸末端部やBauhin弁の温存されていた小腸広範切除群では胆汁酸の変化に比し脂肪吸収障害は軽度であつた.空腸切除群では脂肪吸収障害は認められなかつた.
以上のように,腸管切除後には胆汁酸代謝障害が起きやすく, とくに回腸,回盲部の欠如が大きく関与していることが明らかとなつた. これらは脂肪吸収障害の原因ともなり,長期にわたる管理を行うためには,術後の胆汁酸分析が重要であると考えられた.
キーワード
胆汁酸代謝, 脂肪吸収障害, 腸切除後障害, deoxycholic acid
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