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日外会誌. 82(10): 1231-1235, 1981
原著
胆内結石症の外科的治療
-特に,肝内胆管病変と手術々式を中心に-
I.内容要旨昭和44年6月から昭和55年6月までの間に当教室で経験した肝内結石症82症例の手術成績の追跡調査結果と肝内胆管病変部の肝切除例中, 23切除例標本について少なくとも区域胆管全域に恒る病理組織切片を作製し,胆管壁の病変と胆汁うつ滞,結石の成因について考察した.
肝内胆管自体に病変を認めない続発性肝内結石症(病型I,病型II) では肝外病変部の処置と溶血性貧血,十二指腸憩室炎等の合併疾患の治療により良好な治療成績が得られた.
肝内胆管に狭窄,拡張部病変を有する原発性肝内結石症のうち病変部が肝左葉に限局するIII型症例23例中肝左葉切除5例,外側区域切除7例,肝部分切除3例の計15例に肝切除を行つた.病変部が両葉にまたがるIV型28症例中10例に肝切除を追加した. drainage手術として,総胆管十二指腸吻合,総肝管(総胆管)空腸吻合,拡大胆管空腸吻合を行つた.
術後I年以上経過症例の病型別の遠隔成績をみると,平均追跡期間4年10カ月で改善率はI型で79%,III型85%,IV型55%であつた.特にIII,IV型症例にdrainage術式として, 総胆管十二指腸吻合術,肝内胆管消化管吻合を施行した症例の予後が極めて不良であつた.一方,III,IV型症例に対し,拡大胆管空腸吻合術の遠隔成績は良好であつた.
III,IV型の切除肝組織の検索では, 拡張病変部内腔のcellular debrisを中心とする粘液物質, 細菌塊と胆汁の混在,未熟な結石形成が認められた.かかる病変は相対的狭窄部に続く拡張部病変でも認められ,また.かかる病変は1mm以下の細い胆管部位では認められなかつた. これらの所見と術後の遠隔成績からみて,肝内胆管に狭窄拡張病変を有する原発性肝内結石症では狭窄部病変の除去のみでは不充分で拡張部病変をも切除することが重要である. かかる病変の完全な切除が困難である症例では, drainage効果の大きい術式,すなわち拡大胆管空腸吻合術が最も有効と考えられた.
キーワード
肝内結石症, 遺残結石, 肝内胆管枝合流口形成術
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