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日外会誌. 82(10): 1177-1187, 1981


原著

デキストラン・ショックにおけるcorticosteroneの抗ショック効果に関する実験的研究

群馬大学 第1外科学教室(主任:中村卓次教授)

小暮 公孝

(昭和56年3月7日受付)

I.内容要旨
デキストラン・ショックに対するcorticosterone の抗ショック効果の機序を検討する目的でWistar 系ラットを用い,正常群,副腎摘除群,副腎摘除+ corticosterone投与群の3群について血漿ヒスタミン量,ヘマトクリット値,血圧および前肢浮腫厚を測定した.
副腎摘除群では血漿ヒスタミン量が,他の2群に比し著明に増加し,かつ長時間にわたり高値を持続した.またへマトクリット値が著明に増加しhemoconcentrationを呈した. さらに血圧は著明に低下し,血圧低下から完全に回復することなく死亡した.一方,刷腎摘除+corticosterone投与群では血漿ヒスタミン量は正常群とほぼ同様の変動を示した. また最初へマトクリット値が増加しhemoconcentrationを呈したが, 30分以後はhemodilutionへ移行した.血圧の変動も正常群とほぼ同様で,デキストラン投与後2時間で投与前値に回復し,死亡率も正常群とほぼ同等であつた.前肢足部で測定した浮腫厚は,副腎摘除群で少なく,正常群と副腎摘除+corticosterone投与群ではほぼ同等の値を示した.更にヒスタミン投与に対するcorticosterone の効果を,上記3群のラットを用い検討した結果, corticosterone はヒスタミンの代謝を促進し,ヒスタミンによる血圧の変動を抑制することを明らかにした.なお, corticosteroneがデキストランによるヒスタミンの放出を抑制する機序のひとつとしてcorticosteroneがmast cell数を減少させることによることを示唆した.

キーワード
デキストラン, ショック, ヒスタミン, corticosterone


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