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日外会誌. 82(8): 860-871, 1981
原著
消化器癌患者末梢血細胞のNK活性とADCC活性の検討
I.内容要旨腫瘍に対する免疫監視機構において, 特に癌発生初期におけるNK cell及びK cell の役割を検討するため,消化器癌患者121名(胃癌86名,大腸癌19名,肝癌8名,食道癌4名,その他4名),良性疾患々者41名,健常者63名を対象とし,末梢血NK活性, ADCC活性を測定した.標的細胞としては,P-4788,麻疹ウイルス感染HeLa,ニワトリ赤血球を用いた.同時に癌患者の末梢血IgG-Fc receptor陽性T cellの全リンパ球に対する割合も測定し, NK活性, ADCC活性との相関性を検討し,次の結果を得た.
1) 各種消化器癌患者末梢血NK活性は, 良性疾患々者及び,健常者に比し,有意の低下を示した.また, ADCC活性は,消化器癌患者と健常者の間に有意差は認めなかつた.
2) 胃癌患者末梢血NK活性は, stage Iにおいて,健常者に比し,すでに有意の低下を示した.そして, stage の進行とともに,若干低下する傾向を示した. ADCC活性は,stage Iにおいて低下し, stage II,IIIにて上昇し, stage IVにおいて低下する特徴的傾向を示した.
3) 健常者においては,末梢血リンパ球NK活性とADCC活性とは高い相関性を示し, NK cellとK cell とは比較的類似した細胞であると思われた. これに比し,担癌患者においては,両者の相関性は低下した.
4) 癌患者において, IgG-Fc receptor陽性T cell の全リンパ球に占める割合と,ADCC活性とは比較的高い相関性を示したが, NK活性との間には,相関性は見られなかつた.
以上より,健常者においては, NK cell とK cell とは極めて類似したsubgroupに属するものと思われるが,担癌状態においては,多少その性格を異にすると思われる.これ等の細胞は,腫瘍に対する免疫監視機構において,特に発癌過程に際し,重要な役割をはたしているものと思われる.
キーワード
消化器癌, 胃癌, NK活性, ADCC活性, IgG-Fc receptor 陽性 T cel
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